📖 この記事で分かること
- Thinking Machines が初モデル「Inkling」を公開
- 総975B・アクティブ41Bの MoE 構成の要点
- 重みが Hugging Face で全公開された配布形態
- Tinker での微調整と同社が狙う収益の置き方
💡 知っておきたい用語
- オープンウェイト:モデルの重み(学習済みパラメータ)自体をダウンロードして手元で改変・再学習できる公開形態。API 越しに借りる形とは違い、組織が自分で作り替えられる。
最終更新日: 2026年8月10日
Thinking Machines が「Inkling」を公開
この記事のポイント
- Thinking Machines Lab が2026年7月15日、初の自社モデルにして初のオープンウェイトモデル「Inkling」を公開しました。
- Mixture-of-Experts 構成で総パラメータ975B・アクティブ41B、最大100万トークンのコンテキストに対応します。
- フルの重みは Hugging Face で配布。同社の微調整基盤 Tinker で組織ごとに作り替える前提の設計です。
Mira Murati 氏(元OpenAI CTO)が率いる Thinking Machines Lab は7月15日、初のモデル「Inkling」を公開しました。約18か月のステルス期間を経た最初の自社モデルであり、同時に同社初のオープンウェイトモデルにあたります。OpenAI・Anthropic・Google の主力モデルが重み非公開なのに対し、Inkling は重みそのものをダウンロードして改変できます。

アーキテクチャと学習
Inkling は Mixture-of-Experts(MoE)トランスフォーマーです。総パラメータは975B(9,750億)ですが、1つのタスクで実際に使うのはそのうち約41B(410億)に絞られます。コンテキスト長は最大100万トークン。事前学習はテキスト・画像・音声・動画にまたがる45兆トークンで行われ、テキスト・画像・音声をネイティブに推論します(現時点の出力はテキスト・コード・整形済みアーティファクト・構造化データ)。
同時に、アクティブ12Bの軽量版「Inkling-Small」のプレビューも公開されました。より低コスト・低レイテンシで扱える位置づけです。その後、Inkling-Small は完全な重みが Apache 2.0 で公開され、一部の推論項目で上位版を上回る結果も報告されています。詳細はInkling-Small が推論で上位版を逆転した検証にまとめています。
入手とエコシステム
フルの重みは Hugging Face(thinkingmachines/Inkling)で配布され、NVIDIA Blackwell 向けの NVFP4 チェックポイントも同梱されています。transformers には day-0 で対応し、SGLang・vLLM といった主要な推論エンジンでも動きます。微調整は同社のファインチューニング基盤 Tinker から行え、公開後すぐにドメイン特化のカスタマイズに入れる設計です。
性能について同社は「現時点で最強のモデルではない(オープン/クローズド問わず)」と明言する一方、トークン効率を訴えています。コーディングでは NVIDIA の Nemotron 3 Ultra の約3分の1のトークン数で同等の性能に届くとされ、推測に走らず不確実性を明示する応答の作りにしています。単一GPUで動く軽量なオープンウェイト機の動向としては、Poolside のコーディングモデル Laguna XS 2.1もあわせて追うと、この分野の広がりが見えてきます。
編集部の見方
編集部は、Inkling の要点は「最強スコア」ではなく 重みを開いたうえでカスタマイズ前提に振り切った設計思想 だと見ます。
- 根拠1: 総975B・アクティブ41Bの重みが Hugging Face で全公開され、transformers・SGLang・vLLM に day-0 対応。自前インフラで動かして作り替える障壁が低い。
- 根拠2: 同社自身が「最強ではない」と認めつつ、Nemotron 3 Ultra 比で約3分の1のトークン効率(コーディング)を前面に出している。競う軸を絶対性能でなく運用コストとカスタマイズ性に置いている。
- 根拠3: 収益をモデル課金でなく微調整基盤 Tinker 中心に据える方針で、「借りる AI」より「自分で形にする AI」に賭けている。
- この見方が変わる条件: 主要ラボが同等規模の重みを同じく開き、かつ絶対性能でも優位を保った場合、オープンウェイトであること自体の差別化は薄れます。
よくある質問
Q: Inkling は誰でも使えますか?
A: フルの重みが Hugging Face(thinkingmachines/Inkling)で公開されており、ダウンロードして手元で動かせます。NVIDIA Blackwell 向けの NVFP4 チェックポイントも同梱され、transformers・SGLang・vLLM に対応します。
Q: パラメータ数の「975B」と「41B」はどう違いますか?
A: 975B は総パラメータ、41B は1つのタスクで実際に働くアクティブパラメータです。MoE 構成のため、巨大な総容量を持ちつつ推論時の計算は一部の専門家(エキスパート)に絞られます。
Q: 微調整はどこで行えますか?
A: 同社のファインチューニング基盤 Tinker から行えます。Thinking Machines は収益をモデル課金でなく Tinker 中心に置くと説明しています。
まとめ
Thinking Machines Lab は7月15日、初のオープンウェイトモデル Inkling を公開しました。総975B・アクティブ41Bの MoE で、100万トークンのコンテキストと45兆トークンのマルチモーダル学習を備えます。重みは Hugging Face で全公開され、Tinker での微調整を前提に「組織が自分で作り替える AI」を軸に据えています。絶対性能ではなくカスタマイズ性とトークン効率で差別化する戦略が、今回の公開の核にあります。
あわせて読みたい: 軽量版のその後の展開は以下の記事で詳しく解説しています。
【用語解説】
- Mixture-of-Experts(MoE): 内部を複数の専門家ネットワークに分け、入力ごとに一部だけを動かす方式。総パラメータを大きく保ちつつ、推論時の計算量を抑えられる。
- アクティブパラメータ: 総パラメータのうち、1回の推論で実際に計算に使われる分。Inkling は総975Bに対しアクティブ41B。
- NVFP4 チェックポイント: NVIDIA の4ビット系フォーマットで保存した重み。対応 GPU(Blackwell)で効率よく推論するための配布形態。
免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。
この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。
引用元:
- [1] Inkling: Our open-weights model(Thinking Machines Lab) – https://thinkingmachines.ai/news/introducing-inkling/
- [2] thinkingmachines/Inkling(Hugging Face) – https://huggingface.co/thinkingmachines/Inkling
- [3] Thinking Machines amps up its bet against one-size-fits-all AI with its first open model, Inkling(TechCrunch) – https://techcrunch.com/2026/07/15/thinking-machines-amps-up-its-bet-against-one-size-fits-all-ai-with-its-first-open-model-inkling/
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15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。