「ChatGPTのプロンプトのコツ」として教わった「ステップバイステップで考えて」。毎回コピペして貼っているけれど、これって本当に効いているのかな……。そんな風に思ったことはありませんか?
書いても書かなくても答えが変わった気がしない。かといって消すのも怖い。正直、もやもやしますよね。
実は、そうしたコツの一部は、もう「古い呪文」になっています。今のChatGPTは中身がすっかり入れ替わっていて、昔のコツの中には効かなくなったどころか、逆に足を引っ張るものまで混ざっているんです。
とはいえ、身構える必要はありません。何が古くて何が今も効くのか、一度仕分けてしまえばあとは迷わず書くだけです。今回はその線引きを、OpenAIの公式情報と研究機関の検証をもとに整理していきます。初心者の方でも大丈夫ですよ。
先に押さえておきたい3つのこと
さて、皆さんに押さえておいてほしいポイントを3つに整理しました。
- コツは「死んだ」のではなく、「使う場所が変わった」だけ
- 今のChatGPTは、コツを盛るより「削る」ほうが効果的
- OpenAIが公式に挙げているコツは、実は3つだけ
プロンプトそのものの書き方から確認したい方は、ChatGPTのプロンプトの基本的な書き方も参考にどうぞ!
なぜ「プロンプトエンジニアリングは古い」と言われるようになったのか
最近、「プロンプトエンジニアリングはもう古い」という言葉を見かけるようになりました。なぜ以前は定番だったコツが、急に通用しなくなったのでしょうか?理由はシンプルで、ChatGPTの中身が別物になっているからです。
既定モデルは「GPT-5.5 Instant」。モデルピッカーで「Medium」「High」「Extra High」を選ぶと推論モデル(内部でじっくり考えるタイプ)の「GPT-5.6 Sol」が動き、「Pro」なら「GPT-5.6 Sol Pro」です。有料プランは複雑な依頼だと自動でInstantからMediumへ切り替わり、「Configure」でオン・オフも変えられます[4]。以前の「Thinking」は、今は「Instant/Medium/High/Extra High/Pro」というレベル選択です。本記事では「思考モード」と呼びますが、画面表示は上記のレベル名です。
つまり、モデル自身がすでに考える力を持つようになったので、「順を追って考えて」と横から指示する必要性が薄れてきているわけです。このあとご紹介する「もう効かないコツ」の多くは、この変化が理由になっています。
もう効かない・逆効果になったコツ4つ
ここからは、よく見かける言い方の中でも「今は逆効果になりうるもの」を4つ見ていきましょう。
①「ステップバイステップで考えて」
定番の呪文ですよね。実はOpenAIの公式ドキュメントには、推論モデルについて「これらのモデルは内部で推論を行うため、”think step by step”や”推論を説明して”と指示するのは不要」、さらに「”step by step”と指示するようなプロンプト技法は性能を高めないことがあり、ときにはむしろ妨げになることがある」と明記されています[2]。ただしこれは「Medium」以上の推論モデルに限った話で、既定の「Instant」では今も有効です。「死んだ技」ではなく「使う場所が変わった」というのが正確なところです。
②「あなたは一流の〇〇です」という役割の指定
よく見かけますよね。実はペンシルベニア大学ウォートン校の研究チームが複数のモデルで検証したところ、専門家の役割を与えても事実の正確さは上がらないと結論づけられています[5]。ただし口調や文体を整える目的なら今も有効です。役割は「賢さ」のスイッチではなく「口調」のスイッチです。ChatGPTのパーソナライズには「基本のスタイルとトーン」という設定もあるので、ChatGPTの口調を設定で変える方法も参考にどうぞ!
③「深呼吸して」「チップを払います」
根強い人気がありますよね。実はウォートン校の検証では、こうした働きかけはベンチマーク全体で見ると意味のある差は出ないと結論づけられています[5]。個別には上下しても、どちらに転ぶかは事前に予測できません。「深呼吸して」は、研究の中で自動的に見つかった一文が広まったもので、普遍的なコツとして提示されたものではありません。研究チームの推奨は、シンプルで明確な指示に集中することです。
④とにかく長く盛ったテンプレート
ルールや注意書きをどんどん足したテンプレート、お使いではありませんか?実はOpenAIのガイダンスには、同じルールの繰り返しや挙動を変えない手順指示は削るべきとあり、「矛盾したルールは、詳細が足りないことよりも大きな不安定さを生む」と明記されています[3]。OpenAI自身の社内評価でも、削ぎ落とした構成のほうが評価スコアが上がり、トークンもコストも下がったと報告されています。「徹底的に調べて」のような強い言い回しも逆効果になる例があります。「盛る」より「削る」。この転換が欠かせません。
今も効くコツ5つ
では「今も効くコツ」は何でしょうか?表で整理してみます。
| よく見るコツ | 今の扱い |
|---|---|
| ステップバイステップで考えて | 思考モードでは不要。Instantでは今も有効 |
| あなたは一流の〇〇です(役割指定) | 事実の正確さは上がらない。口調調整には有効 |
| 深呼吸して/チップを払います | ベンチマーク全体では意味のある差なし |
| とにかく長く盛ったテンプレート | 削るほど安定。矛盾は逆効果になりうる |
| 明確・具体的に書く | 公式が挙げる3つの柱の一つ。今も有効 |
| 守ってほしいことは1〜2個に絞る | 公式の推奨。今も有効 |
OpenAIが公式に挙げているコツは実は3つだけです[1]。組み立て方の枠を加えると、今も効くコツは次の5つに集約できます。
- ゴールを先に書く——結果から書くのが公式の推奨です
- 出力の形と長さを決める
- 使い道(文脈)を伝える
- 守ってほしいことは1〜2個に絞る——本当に困る制約だけに絞ります
- 一発で決めずに直す
「技術的な構文や決まった型は必要ない」ともあります[1]。Goal(何をしてほしいか)・Context(役立つ情報)・Output(形式や長さ)・Boundaries(守ってほしいこと)を、自分の言葉で埋めるくらいの気持ちで十分なんですね。
毎回同じことを書くのが面倒になってきたら、カスタム指示にまとめてしまうという手もあります。ビジネス向けカスタム指示の完成版テンプレートものぞいてみてください。
Instantと思考モードで書き分ける
Instantと思考モードは、どう使い分ければいいのでしょうか?サクッと返事が欲しい雑談や下書きには「Instant」で十分です。複雑な計算や込み入った文章構成には、モデルピッカーで「Medium」以上を選んで思考モードを使いましょう。有料プランでは複雑な依頼だと自動でMediumへ切り替わることもあります[4]。思考モードはモデル自身が考える力を持っているので、「順を追って」の指示は基本的に不要です。
なお、無料版とGoプランでは「GPT-5.6」を使えません[4]。
自分のプロンプトを点検してみる
「自分のプロンプト、盛りすぎていないかな……」と気になった方も多いのではないでしょうか。私たちがおすすめしたいのは、モデル自身にチェックさせるやり方です。OpenAIのガイドでも、自分のプロンプトの矛盾を指摘させるやり方が推奨手法として挙げられています[3]。
普段のプロンプトに、次の一文を添えるだけです。
> 「次のプロンプトを読んで、矛盾している指示・曖昧な指示・不要な繰り返しを箇条書きで指摘してください。修正案は最小限の書き換えで示してください。」
これだけで、盛りすぎたテンプレートのどこが余計なのかをChatGPT自身が教えてくれます。
まとめ
もう効かないコツ4つと、今も効くコツ5つを見てきました。「順を追って考えて」は思考モードでは不要、役割指定は口調調整止まり、感情に訴える一文やテンプレートの盛りすぎはむしろ逆効果——一方でゴールを先に書き、出力の形を決め、制約は1〜2個に絞って反復して直す。この発想を押さえれば、今のChatGPTと十分に付き合えます。まずは今のプロンプトを1つ、ChatGPT自身に点検させてみてはいかがでしょうか?
最新のAI活用の情報は、X(旧Twitter)でも発信しています。よければフォローしてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. プロンプトエンジニアリングはもう終わったのですか?
いいえ、終わったわけではありません。終わったのは「長い呪文を暗記して貼り付ける」やり方で、今は「盛る」から「削る」へ変わってきています。ゴールと出力の形を伝え、守ってほしいことを絞る——この組み立て自体は今も有効です。
Q2. ChatGPTにプロンプトを作らせるのはアリですか?
はい、アリです。OpenAIのガイドでも、モデル自身に矛盾や曖昧さを点検させるやり方が推奨されています。自分の言葉でざっくり書いて、仕上げをChatGPTに手伝ってもらう使い方がちょうどいいです。
Q3. 嘘(ハルシネーション)を減らすにはどう書けばいいですか?
ハルシネーションとは、もっともらしい嘘を自信たっぷりに答えてしまうことです。役割を与えるだけでは、事実の正確さは上がりません。有効なのは、曖昧さを避けて必要な文脈を渡すこと、そして出力を見てから反復して直すことです。
Q4. 無料版でも思考モードは使えますか?
「Medium」以上で動く思考モードの「GPT-5.6 Sol」は、無料版とGoプランでは使えません。思考モードを使いたい場合は、プランを確認しておきましょう。
Q5. 「深津式」など昔から知られている型はもう使えませんか?
型そのものが悪いわけではありません。問題になりやすいのは、項目を盛りすぎたり指示同士が矛盾したりすることです。役割・制約・出力形式といった構造を与えること自体は、今も有効な考え方です。
最終更新日:2026年7月29日
※免責事項 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、最新情報については各サービスの公式サイトをご確認ください。
Citations:
[1] OpenAI公式ヘルプ「Prompt engineering best practices for ChatGPT」
[2] OpenAI公式ドキュメント「Reasoning best practices」
[3] OpenAI公式ドキュメント「Prompting guidance for GPT-5.6」
[4] OpenAI公式ヘルプ「GPT-5.6 in ChatGPT」
[5] ペンシルベニア大学ウォートン校 Generative AI Labs(プロンプト検証レポート)
Previous Post
生成AIニュース 昨日【2026年7月28日(火)】のAI公式発表を3分でチェック
Next Post
MCPがセッションを廃止しステートレス化。旧HTTP+SSEは1年で移行へ
生成AI・IT活用の初心者向け解説を得意とするWebライター。
商品開発や業務効率化のコンサルタントとして10年以上の活動を行い、現在は中小企業のデジタル活用支援や、AIツールの導入・教育コンテンツ制作を多数手がける。DX研修の受講者数は100名を優に超える。
「難しい技術を、やさしく・わかりやすく」をモットーに情報発信中。