vLLM 0.25 は、オープンソースのLLM推論エンジンが名物のPagedAttention実装を削除し、Model Runner V2を既定の実行パスに切り替えた大型リリースです。
📖 この記事で分かること
- vLLM v0.25.0 で PagedAttention 実装が削除された事実
- Model Runner V2 が dense モデルの既定になった意味
- 新規対応モデルと依存関係の更新点
- 既存の推論運用が確認すべきポイント
💡 知っておきたい用語
- vLLM:オープンソースの LLM 推論・配信エンジン。自前サーバーで大規模言語モデルを高速に動かすための土台
最終更新日: 2026年7月14日
▶ 公式ページ
- vLLM v0.25.0 リリースノート(GitHub)

vLLM v0.25.0 で何が変わったか
vLLM v0.25.0 は、推論エンジン内部の実行パスを新世代の Model Runner V2(MRv2)へ本格的に切り替えたリリースです。旧来の PagedAttention 実装が削除され、dense モデルの既定経路が置き換わりました。
この記事のポイント
- vLLM v0.25.0(2026年7月時点)が公開され、Model Runner V2 が全 dense モデルの既定実行パスになりました。
- vLLM を有名にした PagedAttention のレガシー実装が削除され、内部アーキテクチャが世代交代しました。
- 規模は 558 コミット / 232 コントリビューター(うち新規 64 名)。GLM-5・DeepSeek-V3.2 など新モデル対応も追加。
vLLM は、自前のサーバーやクラウド GPU 上で大規模言語モデル【エルエルエム】を動かすためのオープンソース推論エンジンです。今回の v0.25.0 は 558 コミット / 232 コントリビューター(うち新規 64 名)を集めた大型リリースで、単なる機能追加ではなく、実行の心臓部を入れ替えた点が特徴です。
PagedAttention 削除の意味
今回いちばん象徴的なのは、PagedAttention の旧実装が削除されたことです。
PagedAttention は、KV キャッシュ(推論中に保持する途中計算)を OS の仮想メモリのようにページ単位で管理し、メモリの断片化を抑える手法でした。vLLM の高いスループットを支え、プロジェクトの名を広めた中核技術です。
その実装がレガシー扱いとなり、コードごと削除されました。理由は、V1 / MRv2 バックエンドが標準経路として成熟し、旧実装を維持する必要がなくなったためです。ここで押さえておきたいのは、削除されたのは「旧来の実装」であって、ページ単位でキャッシュを扱うという発想そのものが無価値になったわけではない点です。設計思想は後継の実行パスに引き継がれています。
Model Runner V2 が既定になった
v0.25.0 では、Model Runner V2(MRv2)が全 dense モデルの既定実行パスに昇格しました。MRv2 は「モジュール化された、より高速なコア」として以前から開発が進められてきたもので、今回それが標準になりました。
MRv2 側では次の機能が加わっています。
- EVS への対応、およびリアルタイム埋め込み(realtime embeddings)
- Mamba ハイブリッドモデル向けの prefix caching
- マルチモーダル prefix の双方向 attention
- フル CUDA グラフに対応した動的な投機的デコーディング(dynamic speculative decoding)
あわせて、Transformers モデリングバックエンドがネイティブ vLLM と同等の速度になり、FP8 MoE のサポートも追加されました。従来「速度が欲しいならネイティブ実装、対応の広さなら Transformers 経由」という使い分けがありましたが、その差が縮まった形です。
ツールや推論の出力解析まわりでは、tool-call と reasoning のパースを一本化する統合 Streaming Parser が新設されています。エージェント用途で出力を逐次パースする実装の見通しが良くなります。
対応モデルと依存関係の更新
新規に対応したモデルには、LLaVA-OneVision-2、Unlimited OCR、MOSS-Transcribe-Diarize、Hy3 などが並びます。加えて GLM-5 や DeepSeek-V3.2 といった新しめのモデルもモデル群に加わりました。
依存関係では FlashInfer 0.6.13、tpu-inference v0.23.0 に更新されています。GPU だけでなく TPU 系の実行環境も追随している点は、マルチアクセラレータ運用の現場には確認しておきたい情報です。
影響とユースケース
このリリースは、vLLM を本番の推論基盤として使っているチームに直接効きます。
既定の実行パスが変わるため、これまで旧バックエンドを明示的に固定していた環境や、レガシー挙動に依存していた運用は、まず動作確認が必要です。逆に、GLM-5 や DeepSeek-V3.2 のような比較的新しいモデルを載せる予定がある現場では、対応拡大がそのまま追い風になります。
新規に構築する推論サービスであれば、MRv2 が既定になったことで、投機的デコーディングやマルチモーダル対応などの新機能を最初から前提に設計できます。
編集部の見方
編集部は、v0.25.0 で最も本質的なのは新機能の数ではなく、PagedAttention 削除に象徴される内部アーキテクチャの世代交代だと見ます。
- 根拠1: vLLM の看板技術だった旧実装をあえて削除し、MRv2 を dense モデルの既定に据えた(2026年7月時点)。これは「試験導入」ではなく標準経路の確定を意味します。
- 根拠2: Transformers バックエンドがネイティブ同等速度になり、対応の広さと速度のトレードオフが縮小。エンジン選定の判断軸が一つ減ります。
- この見方が変わる条件: MRv2 既定化によって既存構成の互換性トラブルが広範に報告される場合、当面は旧構成を保持する慎重運用が現実解になり、評価の重心は「移行のしやすさ」へ移ります。
OSS 推論基盤は選定の入れ替わりが速い領域です。今回のように「名物機能を削ってでもコアを刷新する」動きは、プロジェクトが次の数年を見据えて土台を作り直している合図として読み取れます。
よくある質問
Q: PagedAttention が使えなくなったのですか?
A: 削除されたのは旧来の実装です。ページ単位で KV キャッシュを管理する設計思想自体は、後継の V1 / MRv2 バックエンドに引き継がれています。
Q: 既存の vLLM 環境をすぐ更新すべきですか?
A: 既定の実行パスが MRv2 に変わるため、旧バックエンドを固定していた環境やレガシー挙動に依存する運用は、更新前に動作確認をおすすめします。新規構築なら MRv2 前提で設計できます。
Q: どんなモデルが新しく使えますか?
A: LLaVA-OneVision-2、Unlimited OCR、MOSS-Transcribe-Diarize、Hy3 などに対応し、GLM-5 や DeepSeek-V3.2 もモデル群に加わりました。
まとめ
vLLM v0.25.0 は、看板技術だった PagedAttention の旧実装を削除し、Model Runner V2 を dense モデルの既定に据えたリリースです。558 コミット規模の更新には新モデル対応や Streaming Parser の統合も含まれますが、核にあるのは推論コアの世代交代です。本番運用中のチームは、既定パス変更の互換性確認を早めに済ませておくのが安全です。
【用語解説】
- KV キャッシュ: 言語モデルが文章を生成する途中で保持する計算結果。これを効率よく管理できるほど、長い文脈でもメモリを節約して高速に動かせます。
- Model Runner V2(MRv2): vLLM の新しい実行コア。モジュール化され、投機的デコーディングやマルチモーダルなどの機能を前提に設計されています。
- 投機的デコーディング: 小さいモデルで先に候補を予測し、本命モデルでまとめて検証することで生成を高速化する手法。
引用元:
- [1] vLLM v0.25.0 リリースノート(GitHub)
この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。
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15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。