Leanstral 1.5 は、Mistral AI が2026年7月2日に公開した Lean 4 の定理証明と形式検証に特化したオープンソースのコードエージェントモデルです。
📖 この記事で分かること
- Leanstral 1.5 の位置づけと公開日
- 119B/6B の MoE 構成と主要ベンチマーク
- 実コード検証で見つけた本物のバグの中身
- 業務で使う際の判断材料
💡 知っておきたい用語
- Lean 4:数学の証明やプログラムの正しさを機械で厳密に検査できる証明支援言語。人手のレビューでは見落とす矛盾も、コンパイラが機械的にはじきます。
最終更新日: 2026年7月6日
▶ 公式ページ
- Leanstral 1.5: Proof Abundance for All(Mistral AI)
- mistralai/Leanstral-1.5-119B-A6B(Hugging Face)

Leanstral 1.5 の公開概要
Mistral AI は2026年7月2日、Lean 4 の定理証明と形式検証に特化したコードエージェントモデル「Leanstral 1.5」(2026年7月時点)を公開しました。ライセンスは Apache-2.0 で、モデル重みと API がいずれも無料で提供されます。
この記事のポイント
- Mistral AI が2026年7月2日、Lean 4 特化モデル Leanstral 1.5 を Apache-2.0 で公開(2026年7月時点)。
- 総パラメータ119B・アクティブ6B の MoE で、miniF2F を100%飽和、PutnamBench は672問中587問を解答。
- Hugging Face と無料 API で即利用可。数学証明とコード検証の自動化を狙う。
Leanstral 1.5 は、数学の定理を Lean 4 で証明する用途と、既存コードの正しさを形式的に検証する用途の両方を1つのモデルで扱います。証明支援というと研究者向けに聞こえますが、後述するように実際の Rust コードベースからバグを検出する成果も示されており、開発現場に近い応用も視野に入っています。
119B/6B の MoE と学習手法
Leanstral 1.5 は総パラメータ119B、推論時のアクティブパラメータ6B の Mixture-of-Experts(MoE)構成です。規模を確保しつつ、実際に動く重みを絞って推論コストを抑える設計になっています。
学習は3段階で構成されます。事前学習後の mid-training、教師ありファインチューニング、そして CISPO を用いた強化学習です。強化学習では2種類の環境が使われました。1つは Lean コンパイラの反復フィードバックを受ける定理証明環境、もう1つはファイル編集・bash・language server を扱うコードエージェント環境です。証明そのものだけでなく、開発ツールを操作しながら試行錯誤する経験を学習に組み込んでいる点が特徴です。
ベンチマークとコスト効率
Mistral が公開した数値では、Leanstral 1.5 は主要な証明ベンチマークで高い水準を示しています。
- miniF2F:検証・テストの両セットで100%に到達(飽和)
- PutnamBench:4M トークン予算で672問中587問を解答
- FATE-H:87%(公表時点で最高水準)
- FATE-X:34%(同)
- FLTEval:Pass@1 が21.9→28.9、Pass@8 が31.9→43.2 に改善
注目すべきはコスト効率です。PutnamBench では1問あたり約4ドルで解けたとされ、比較対象の Seed-Prover 1.5 の約300ドル超と大きな差があります。証明探索は計算量が膨らみやすい領域だけに、1問あたりの単価は実運用の可否を左右します。
実コードのバグ検出という実用面
Leanstral 1.5 は数学の問題を解くだけでなく、実在するコードのバグ発見にも使われました。Mistral は57のリポジトリを自動パイプラインで検査し、47件のプロパティ違反を検出したと報告しています。
そのうち11件が本物のバグと確認され、5件は GitHub で未報告だった新規の不具合でした。具体例として、datrs/varinteger の zigzag デコード処理で U64.MAX を扱う際にオーバーフローが起きる問題が挙げられています。テストでは再現しにくい境界値の欠陥を、形式検証の観点から拾い上げた形です。
編集部の見方
コスト効率と実応用の両面から評価軸を整理します。
性能とコストの両立:証明ベンチマークで高スコアを出すモデルは以前からありましたが、1問あたり約4ドルという単価は、探索コストが実験の障壁になっていた領域では実務的な意味を持ちます。飽和した miniF2F より、コスト差のほうが現場の判断に効く指標です。
研究用途か開発用途か:公表内容の主軸は定理証明ですが、実コードのバグ検出まで踏み込んだ点は、証明支援を「研究者の道具」から「検証の自動化基盤」へ広げようとする姿勢がうかがえます。ただし現時点で示された実例は限定的で、任意のコードベースへ横展開できるかは各自の検証が要ります。
誰に向くか:Lean 4 を既に使う研究者・エンジニア、形式検証を CI に組み込みたいチームには試す価値があります。一方、Lean を前提としない一般的なアプリ開発では、導入のための学習コストが先に立ちます。Apache-2.0 かつ無料 API のため、まず小さく試して費用対効果を測る入口としては敷居が低い構成です。
まとめ
Leanstral 1.5 は、Lean 4 の定理証明と形式検証に特化した119B/6B の MoE モデルで、miniF2F 飽和や PutnamBench 587/672 といった数値に加え、1問約4ドルのコスト効率と実コードのバグ検出実績を示しました。Apache-2.0 で Hugging Face と無料 API から利用でき、形式検証を自動化したいチームにとって具体的な選択肢になります。
よくある質問
Q: Leanstral 1.5 は無料で使えますか?
A: はい。ライセンスは Apache-2.0 で、モデル重みは Hugging Face、推論は無料 API エンドポイント(leanstral-1-5)から利用できます(2026年7月時点)。
Q: 数学の証明以外にも使えますか?
A: Mistral は57リポジトリの自動検査で11件の本物のバグ(うち5件は未報告)を検出したと報告しており、実コードの形式検証にも用いられています。
Q: 従来の証明モデルと比べた強みは何ですか?
A: PutnamBench で1問あたり約4ドルと、比較対象の Seed-Prover 1.5 の約300ドル超に対しコスト効率が大きく改善している点が公表されています。
まとめ
Mistral AI は Lean 4 特化の Leanstral 1.5 を Apache-2.0 で公開し、証明ベンチマークの高スコアとコスト効率、実コードのバグ検出を同時に示しました。形式検証の自動化を検討するチームは、無料 API から試せます。
【用語解説】
- MoE(Mixture-of-Experts): 多数の小さな専門ネットワークを持ち、入力ごとに一部だけを動かす構成。総パラメータは大きいまま、推論時の計算量を抑えられます。
- 定理証明: 数学の命題やプログラムの性質が正しいことを、論理の規則に従って厳密に導く作業。機械が検査できる形で証明を書くのが Lean 4 の役割です。
- PutnamBench: 難関数学コンテストの問題を機械証明の題材にしたベンチマーク。証明モデルの実力を測る指標として使われます。
引用元:
- [1] Leanstral 1.5: Proof Abundance for All(Mistral AI)
- [2] mistralai/Leanstral-1.5-119B-A6B(Hugging Face)
- [3] Mistral AI Releases Leanstral 1.5(MarkTechPost)
この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。
15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。