AI世論調査「Anthropic Public Record」は、Anthropic が2026年6月12日に公開した、米国民51,993人を対象にAIへの期待と不安を尋ねた大規模調査です。
📖 この記事で分かること
- Anthropic が米国民約5.2万人に聞いたAI世論調査の結果
- 期待は「病気の治療」、不安は「雇用喪失」が最多という構図
- AI企業への信頼が全機関で最低の15%だった事実
- 業務でAIを導入する側が押さえるべき従業員心理
💡 知っておきたい用語
- AI世論調査:一般の人々がAIに何を期待し、何を不安に感じているかを統計的に把握する調査のこと。
最終更新日: 2026年6月16日
▶ 公式ページ
- Anthropic Public Record(調査結果の公式発表)(Anthropic)

Anthropic Public Record とは何か
Anthropic が2026年6月12日、米国民のAIに対する意識を調べた大規模調査「Anthropic Public Record」の初回結果を公開しました。AIへの期待と不安、規制への姿勢を数値で示した内容です。
この記事のポイント
- Anthropic が2026年6月12日、米国民51,993人を対象としたAI世論調査の初回結果を公開しました。
- 期待は「病気の治療」48%、不安は「雇用喪失」64%が最多で、AI企業への信頼は15%と全機関で最低でした。
- 調査は YouGov が2025年11月〜12月に実施、全国誤差は±0.6ポイントです。
Anthropic Public Record は、AIに対する世論を継続的に追跡する新しい調査シリーズです。調査票は YouGov が設計・実施し、2025年11月1日から12月11日にかけて、16歳以上の米国民51,993人から回答を得ました。サンプルは米国勢調査の基準に合わせて加重され、全国レベルの誤差は±0.6ポイント、州別では±2.6〜±9.1ポイントの範囲です。
Anthropic は発表のなかで「AIが進む方向を、それを作る企業だけが決めるべきではない」という問題意識を示しています。今後も定期的に実施し、将来的には米国外へ対象を広げる計画です。AI開発企業が自社製品の宣伝ではなく、人々の不安や期待そのものを数値化して公開した点が、この調査の特徴です。
調査結果の要点:期待と不安は併存している
期待と不安が二者択一ではなく、同じ社会のなかで併存していることが数値から読み取れます。
期待の面では、「上位3つ」に選ばれた割合として、がんやアルツハイマー病など病気の治療が48%で最も高く、障害のある人の支援が36%、技術進歩と生活の質向上がそれぞれ23%と続きました。医療分野への期待が突出しています。
一方の不安では、雇用の喪失が64%で最多となり、全州を通じて最も多く挙げられました。次いでAIへの認知的依存が56%、誤情報の拡散が52%です。技術への期待が高い層であっても、自分の仕事や判断力への影響は別の不安として抱えている構図がうかがえます。
AIの能力認識も尋ねており、研究領域では「人間と同等以上」と見る回答が75%に達しました。サービスやサポートの領域では44%です。専門性の高い領域ほどAIを高く評価する傾向が見えます。
規制への支持と「企業への低い信頼」
政府の関与と業界の説明責任を求める声が、党派を超えて多数を占めました。
政府がAIに関与することへの支持は全体で71%でした。内訳は民主党支持層79%、共和党支持層68%、無党派層69%で、立場による差が小さい点が目立ちます。規制で優先すべき分野は、プライバシー56%、子どもの安全52%、被害が生じた際の責任49%の順でした。
業界の説明責任については、被害に対する法的責任を求める回答が47%、成長より安全を優先すべきとする回答が44%、独立した監視機関の設置が29%、安全のための開発減速が27%と続きます。
機関への信頼度では、AI企業が15%と、調査したすべての機関のなかで最も低い結果でした。連邦政府20%、州・地方政府19%、国際機関20%と並ぶなか、独立した専門家への信頼は43%と最も高くなっています。AIを作る企業そのものよりも、第三者の専門家による検証を信頼する姿勢が表れています。
なお、仕事と私生活の両方で毎日AIを使う「統合ユーザー」は米国民の6%にとどまりました。この層は若年・男性・都市在住・就業中・大卒に偏り、64%が自らを技術の早期採用者と認識しています。
編集部の見方
数値そのものより、「誰を信頼するか」の分布が業務判断に効くと編集部は見ています。評価軸を3点で整理します。
第三者検証の重みが増す:AI企業への信頼が15%で最低、独立専門家が43%で最高という差は、ベンダーの自己申告だけでは社内外を説得しにくくなることを意味します。業務導入の稟議では、提供企業の説明に加えて、独立した評価指標や外部監査の有無が判断材料として効いてきます。
「期待」と「不安」は同じ人の中にある:病気の治療への期待48%と雇用喪失への不安64%は、対立する別々の層ではなく、同じ社会に同居しています。社内でAI活用を進める際も、推進派と慎重派を分けて考えるより、一人の従業員が両方の感情を持つ前提で説明したほうが現実に合います。
雇用不安への向き合い方が運用の成否を分ける:不安要因の最多が雇用である以上、AI導入を「効率化」だけで語ると現場の納得は得にくくなります。どの業務を任せ、人は何に時間を使うのかをセットで示せるかが、定着の分かれ目になります。
この調査は米国民が対象で、日本の世論をそのまま映すものではありません。ただし「企業より第三者を信頼する」「期待と不安が併存する」という構図は、日本企業の社内導入でも参考になる視点です。
今後の展開
Anthropic はこの結果を自社の政策フレームワークに反映するとしています。調査は単発ではなく継続シリーズとして位置づけられ、対象も将来的に米国外へ拡大する予定です。AI開発企業が世論を定点観測し、公開し続ける枠組みが定着するかどうかが、次の焦点になります。
よくある質問
Q: この調査は誰が、いつ実施したのですか?
A: 調査票は YouGov が設計・実施し、Anthropic が結果を2026年6月12日に公開しました。回答収集は2025年11月1日から12月11日にかけて行われています。
Q: 何人が回答したのですか?
A: 16歳以上の米国民51,993人です。米国勢調査の基準に合わせて加重され、全国レベルの誤差は±0.6ポイントとされています。
Q: 日本の状況にもあてはまりますか?
A: 今回の対象は米国民のみで、日本の世論を直接示すものではありません。ただし「AI企業より独立専門家を信頼する」「期待と不安が併存する」といった構図は、日本でも参考になります。
まとめ
Anthropic Public Record の初回調査は、米国民が病気の治療に期待を寄せる一方、雇用喪失を最大の不安とし、AI企業を最も信頼の低い機関とみなしている実態を示しました。AI開発企業が自社に不利な数値も含めて世論を公開した点に、この取り組みの意味があります。業務でAIを扱う側にとっては、技術の性能だけでなく、利用者と従業員の不安にどう向き合うかが問われる結果です。
【用語解説】
- Anthropic Public Record: Anthropic がAIに対する世論を継続的に把握するために始めた調査シリーズ。初回は米国民を対象に実施された。
- 加重【かじゅう】: 回答者の構成が実際の人口比と一致するよう、統計的に重みづけして全体像を補正する手法。
- 統合ユーザー: 仕事と私生活の両方で毎日AIを使う層を指す本調査の区分。米国民の6%にあたる。
引用元:
- [1] Results from the first Anthropic Public Record(Anthropic)
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15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。