YC QM - YCが社内で実運用する業務エージェント基盤をMIT公開。モデル非依存で自社クラウドに置ける anchor left anchor right

Aug 02 2026 AIニュース

YCが社内で実運用する業務エージェント基盤をMIT公開。モデル非依存で自社クラウドに置ける

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YC QMは、Y Combinator が社内で実運用する業務エージェント基盤「QM」が、MIT ライセンスで公開されました。

📖 この記事で分かること

  • YC が社内で使う業務エージェント基盤の中身
  • 人ごと・部屋ごとに環境と権限を分ける設計思想
  • Claude Code や Codex を差し替えて動かせる理由
  • セキュリティ姿勢3段階と共通のコマンド制限

💡 知っておきたい用語

  • ハーネス: エージェントを実際に動かす土台のプログラム。同じ設計でも載せ替えると、思考や作業の進め方が変わる

最終更新日: 2026年8月2日

▶ 公式ページ

YC QM - YCが社内で実運用する業務エージェント基盤をMIT公開。モデル非依存で自社クラウドに置ける

Y Combinator が公開した「QM」とは

この記事のポイント

  • Y Combinator が業務エージェント基盤「QM」を MIT ライセンスで公開しました(リポジトリ作成は2026年7月29日)。
  • 従業員ごと・部屋ごとにメモリ・権限・サンドボックスを分離する設計です。
  • Pi・OpenCode・Codex・Claude Code が同じコアを駆動します(2026年8月時点)。
  • GitHub のスター数は4,935(2026年8月2日時点)。

QM は「仕事のためのマルチプレイヤー・エージェント基盤」と位置づけられ、Slack と Web の両方から同じエージェントを使えます。名称は船の運航を差配する quartermaster に由来します。

出発点にあるのは、既存のエージェントの多くが「個人アシスタント」として設計されているという認識です。それを全社規模に広げようとすると急速に複雑になる。QM はスタートアップの組織構造を前提に、従業員それぞれが隔離されたワークスペースを持ち、互いに影響を与えず独立して作業しながら、チャンネル・グループDM・プロジェクトでは協働もできる形を取っています。

公式ページによれば、YC はこれ以前に単純な Ruby のエージェントループと、50 以上プロビジョニングした Hermes エージェントを試しています。前者は用途が限定的で、後者は管理が難しかった。「Hermes 並みに柔軟で、元のシステム並みに単純なもの」を求めた結果が QM だと説明されています。

スコープ単位の分離と、ハーネス非依存の構造

QM の設計上の中心は、能力よりも分割の単位にあります。人ごと・部屋ごとに、スコープされたメモリ、ファイル、keychain のビュー、権限、cron、Web アプリ、そして永続サンドボックスを持ちます。

もう一つの軸がベンダーロックインの回避です。ハーネスとモデルを選んで切り替えられ、Pi・OpenCode・Codex・Claude Code がいずれも同じコアを駆動します。特定ベンダーの都合でデプロイ全体が縛られない構造になっています。

アーキテクチャは、毎ターンが中央のヘッドレスコア(API【エーピーアイ】・identity・policy・scheduler とエージェントループ)を通る形です。永続化は Postgres が担い、セッション・メモリ・キューを保持します。エージェントに与えるツール面は小さく固定され、そのうちの execute が、スコープ専用の隔離サンドボックスでコマンドを実行します。このサンドボックスはインストールしたツールが残る「永続的なコンピュータ」として扱われます。

実装面では、コアが TypeScript を Node で直接実行し、HTTP は Fastify を使います。Slack プラグインは Bolt、Web UI は Vite でビルドし Lit でレンダリングします。Web UI・管理パネル・公開ポータルは、いずれもコアの HTTP API 上に載る任意のプラグインです。

セキュリティ姿勢は3段階、コマンド制限は全姿勢共通

QM のセキュリティ方針は、ローカルのコーディングエージェントと同じ考え方に立っています。エージェントは「その人」として、その人の資格情報と権限で動き、行為はすべて監査されます。組織はセキュリティ姿勢を1つ選び、より狭いスコープは強める方向にのみ変更できます。

  • Strict: ハーネスのツール呼び出しごとに人間の承認で停止します(副作用のない2つのターン終了系を除く)。
  • Auto(既定): provenance ラベル付きの外部データとツール結果を、モデルに届く前に分類器が選別します。自前の選別プロキシに向けることもできます。
  • Dangerous: コンテンツ選別なし、ツール呼び出し間の停止なしで動きます。

重要なのは、事前宣言のコマンドポリシーが Dangerous を含むすべての姿勢で適用される点です。再帰削除や破壊的な SQL【エスキューエル】などに対する承認ルールと強制拒否は、姿勢の選択によって外れません。

導入形態と、異例のコントリビューション方針

導入は、組織が所有する「デプロイメントリポジトリ」を作り、@yc-software/qm に依存させる形を取ります。qm init . --org <slug> --target <fly-or-aws> で初期化し、各デプロイはオペレータ自身のクラウドアカウントで動きます。初期化の時点では本番 CI を生成も有効化もしません。

開発への関わり方も特徴的です。コントリビューションはコードではなく「人間が書いたテキスト」として受け付けられます。adrs/ に .txt または .md で変更内容を記述し、方向性が合えば YC 側が実装します。

編集部の見方

編集部は、QM で最も参照価値が高いのはエージェントの賢さではなく、権限と実行環境の分割設計だと見ます。

  • 根拠1: スコープ単位でメモリ・権限・keychain のビュー・サンドボックスを分ける構造は、全社導入で最初に詰まる「誰の権限で何が動いたか」に正面から答えています。
  • 根拠2: 事前宣言のコマンドポリシーが Dangerous 姿勢でも外れない設計は、運用側が緩めたときの最悪ケースを先に潰す考え方です。
  • 根拠3: Pi・OpenCode・Codex・Claude Code が同じコアを駆動するため、モデル選定の失敗が基盤の作り直しに直結しません。

この見方が変わる条件は、コントリビューション方針です。コードを受け付けない運用は品質と一貫性を守る一方、外部の改善が反映される速度を制約します。実運用に耐える改善が上流に届き続けるかどうかで、自社導入の前提は変わります。


よくある質問

Q: 商用利用はできますか

A: MIT ライセンスで公開されています(2026年8月時点)。ライセンス条文は公式リポジトリで確認してください。

Q: 特定のモデルに縛られますか

A: ハーネスとモデルを選んで切り替えられます。Pi・OpenCode・Codex・Claude Code がいずれも同じコアを駆動します。

Q: データはどこに置かれますか

A: 各デプロイはオペレータ自身のクラウドアカウントで動きます。永続化には Postgres を使い、セッション・メモリ・キューを保持します。


まとめ

Y Combinator が社内で使う業務エージェント基盤 QM が、MIT ライセンスで公開されました。人ごと・部屋ごとのスコープ分離、ハーネスとモデルの差し替え可能性、そして全姿勢に共通するコマンドポリシーが設計の柱です。エージェントを全社に広げる際の権限設計を検討している組織にとって、実運用されている構成を読める点に価値があります。

企業向けエージェント基盤の他の動きは、以下の記事でも詳しく解説しています:


【用語解説】

  • スコープ: QM で権限やデータを区切る単位。人ごと、部屋ごとに割り当てられる
  • サンドボックス: 他と隔離された実行環境。QM ではインストールしたツールが残る永続型
  • provenance: データがどこから来たかを示す出所情報。QM は既定でこのラベルを見て外部データを選別する

引用元:


この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。

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KOJI TANEMURA

15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。