Gemini Enterprise Agent Platform のエージェント/モデル評価が、2026年7月31日にGA(一般提供)となり、20種類超の指標で開発時と本番の双方を測れるようになりました。
📖 この記事で分かること
- エージェント評価GAで何が測れるようになったか
- 最終出力でなく「過程」を測る指標の中身
- 開発時テストと本番監視がつながる仕組み
- 課金の考え方と利用できる提供経路
💡 知っておきたい用語
- トラジェクトリ: エージェントが答えに至るまでの手順の記録。目的地だけでなく、走った経路そのものを指します
- LLM-as-a-judge: AIの出力を別のAIに採点させる方式。人手の採点者を機械に置き換えるイメージです
最終更新日: 2026年8月1日
▶ 公式ページ
- Agent and Model Evaluations in Gemini Enterprise Agent Platform are now GA(Google Developers Blog)
- Agent evaluation ドキュメント(Google Cloud Documentation)
- Model evaluation の概要(Google Cloud Documentation)

エージェント評価がGAに到達した意味
この記事のポイント
- Googleは2026年7月31日、Gemini Enterprise Agent Platformの「Agent and Model Evaluations」をGA(一般提供)にしました。
- 20種類を超える事前構築メトリクスが、品質・安全性・グラウンディング・ツール利用・トラジェクトリを対象に用意されています(2026年7月時点)。
- 開発時の実験と本番の実トラフィック監視を、同一エンジン・同一指標で回せる点が中核です。
Googleは2026年7月31日、Gemini Enterprise Agent Platform(2026年8月時点)における「Agent and Model Evaluations」の一般提供を発表しました。開発段階と本番運用の両方を、ひとつのエンジンと一貫した指標で測れるようにするものです。
注目したいのは機能追加そのものより、評価の対象が動いたことです。生成AIの評価は長らく「最終的な回答が良いか」を見るものでした。今回GAになった仕組みは、そこに至る過程を測ります。エージェントがどのツールを選び、どんな引数を渡し、どんな順序で動いたか。結果が偶然当たっただけなのか、正しい手順を踏んだ結果なのかを区別しようとする設計です。
20超の指標が測るのは「過程」
事前構築メトリクスは20種類を超え、品質・安全性・グラウンディング・エージェントのツール利用・トラジェクトリという領域をカバーします。公式に名前が挙がっているものには、Task Success、Tool Use Quality、Safety、Trajectory Quality、Final Response Quality、Hallucination、Groundingがあります。
このうち過程を見る指標の性格がよく分かるのがTool Use Qualityです。これはツール選択・引数の正しさ・スキーマ準拠を評価します。つまり「正しい道具を選んだか」「渡した値は妥当か」「決められた形式を守ったか」を、回答の良し悪しとは別に採点する仕組みです。
Trajectory Qualityは手順そのものの質を、Final Response Qualityは最終応答を、それぞれ独立した指標として扱います。両者が分かれていることには実務上の意味があります。最終応答は合格でもトラジェクトリの評価が低ければ、そのエージェントは危うい手順でたまたま正解しているおそれがある、と読めるためです。
自前の基準で測りたい場合は、独自の評価基準と評価スケールを持つLLM-as-a-judgeメトリクスを定義できます。サーバーサイド評価ではModel Gardenのモデルを採点役に使え、全GeminiモデルのほかAnthropicのモデルも含まれます。採点する側のモデルを選べる構成です。
開発時テストと本番監視が同じ指標でつながる
今回の発表で運用面の要になるのは、開発と本番が地続きになったことです。
開発段階では、実験をローカルまたはサーバーサイドで実行し、テストケースに対して評価します。本番ではオンラインモニターが実トラフィックを評価し、サンプリングとドリフトアラートが組み込まれています。ドリフトとは、モデルや利用状況の変化で挙動が徐々にずれていく現象を指します。
エージェントは公開した瞬間が完成ではありません。参照するデータが変わり、ユーザーの入力傾向が変わり、背後のモデルが更新されれば、同じ実装でも振る舞いは動きます。従来はリリース前のテストと本番の監視が別の道具・別の基準で行われがちで、両者の数字を突き合わせられませんでした。同一エンジンで同じ指標を使えるなら、「開発時に測った品質が本番でどれだけ維持できているか」を同じ物差しで追えます。作った後をどう見張るかが本題になっている、という現在地を示す変更です。
課金と提供経路
課金は、何を使うかで分かれる形です。LLM-as-a-judgeを含むモデルベースのメトリクスは、その背後で走るモデル呼び出しに通常レートがかかります。サーバーサイド実行が保持する成果物にはCloud Storageの料金が発生します。一方、コードベースのメトリクスと計算ベースのメトリクスには追加費用がかかりません。評価の設計次第でコストが変わるため、全項目をモデル採点で回す必要はない、という読み方ができます。
提供経路は複数あります。Agent Platform SDK、REST API、agents-cli、ADKフレームワーク、そしてEvals Worksheetと呼ばれるWeb UIです。コードから回したい場合とUIで確認したい場合の双方が想定されています。なお、無料枠の有無や具体的な単価は今回の発表内容からは確認できません。
編集部の見方
編集部は、この更新で最も効くのは指標の数ではなく、開発時テストと本番監視が同一指標でつながった点だと見ます。
- 根拠1: 本番側にオンラインモニターとドリフトアラートが内蔵されており、評価が一度きりのリリース判定ではなく継続的な監視として設計されています。エージェント運用で表面化しやすいのは、リリース時の性能不足より、時間経過で静かに進む劣化です。
- 根拠2: Tool Use Qualityがツール選択・引数の正しさ・スキーマ準拠まで分解して測るため、失敗の切り分けが可能になります。最終応答の良否だけを見る評価では、原因がモデルにあるのか道具の使い方にあるのか判別できません。
- 根拠3: コードベース・計算ベースのメトリクスが追加費用なしで使えるため、継続監視を常時回す際のコスト設計に選択肢があります。
この見方が変わる条件は、実運用での指標の当たり具合です。トラジェクトリ評価やLLM-as-a-judgeは、採点役のモデルと基準設計に品質が左右されます。自社の合否判断と評価スコアが食い違うようであれば、価値の重心は指標の充実度よりも、基準を自前で設計・検証する手間の側に移ります。
よくある質問
Q: モデル評価とエージェント評価は何が違いますか
A: 今回の発表は両者を明確に区別する形では説明しておらず、開発と本番の双方の段階で、エージェントとモデルを一貫した指標で測ることを重視しています。指標としては、最終応答を見るFinal Response Qualityと、手順を見るTrajectory Qualityが別々に用意されています。
Q: 評価にはどれくらい費用がかかりますか
A: LLM-as-a-judgeなどモデルベースのメトリクスは背後のモデル呼び出しが通常レートで課金され、サーバーサイド実行が保持する成果物にはCloud Storage料金がかかります。コードベース・計算ベースのメトリクスは追加費用なしです。具体的な単価は今回の発表内容からは確認できません。
Q: コードを書かずに使えますか
A: Evals WorksheetというWeb UIが提供経路に含まれています。このほかAgent Platform SDK、REST API、agents-cli、ADKフレームワークからも利用できます。
まとめ
Googleは2026年7月31日、Gemini Enterprise Agent PlatformのAgent and Model EvaluationsをGAにしました。20種類を超える事前構築メトリクスは、最終応答だけでなくツール選択・引数の正しさ・スキーマ準拠やトラジェクトリという過程を対象にします。開発時の実験と本番のオンラインモニターが同一エンジン・同一指標でつながり、サンプリングとドリフトアラートが組み込まれた点が、エージェント運用の実務に直接効く変更です。
エージェントの評価そのものに関心がある方は、以下の記事もあわせてどうぞ:
【用語解説】
- グラウンディング: AIの回答を、参照元の情報に基づかせること。根拠のない生成を抑える狙いがあります
- ドリフト: 時間の経過とともにAIの挙動や精度が当初から徐々にずれていく現象
- スキーマ準拠: ツールが定めた入力形式のルールを、渡す値が正しく満たしている状態
引用元:
- [1] Agent and Model Evaluations in Gemini Enterprise Agent Platform are now GA(Google Developers Blog)
- [2] Agent evaluation(Google Cloud Documentation)
- [3] Model evaluation in Agent Platform(Google Cloud Documentation)
この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。
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15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。