📖 この記事で分かること
- Sakana AIが2026年3月24日に「Sakana Chat」を無料公開した
- 独自の事後学習技術で日本仕様に適応させた「Namazu」シリーズを搭載
- Web検索機能付きで国内から誰でもアカウント不要で利用できる
- 海外モデルのバイアス・検閲問題をほぼ0%に改善した成果が示された
💡 知っておきたい用語
- ポストトレーニング(事後学習):大規模言語モデルを事前学習した後、特定の目的・地域・価値観に合わせて追加で調整する技術。巨大モデルをゼロから作る必要がないため、コストを大幅に抑えられる。
最終更新日: 2026年03月25日
Sakana ChatとNamazuシリーズとは
Sakana AIが2026年3月24日に公開した「Sakana Chat」は、同社が開発した日本仕様の大規模言語モデル(LLM)シリーズ「Namazu」(α版)を搭載した無料のAIチャットサービスです。現時点で日本国内からのみ利用可能で、アカウント登録なしでもすぐに使い始められます。
Namazuシリーズに含まれるモデルは以下の3つです。
- Namazu-DeepSeek-V3.1-Terminus
- Llama-3.1-Namazu-405B
- Namazu-gpt-oss-120B
いずれも公開時点で高い性能を持つオープンウェイトの基盤モデルをベースとし、Sakana AI独自の事後学習技術で日本仕様に適応させたプロトタイプです。
なぜ「日本仕様への適応」が必要なのか
LLMの事前学習は、開発コストの拡大により、現在では米国・中国を中心とする一部のプレイヤーにしか追随できない状況になっています。一方で、事前学習済みのオープンウェイトモデルの公開も同時に進んでいます。
こうした構造において、Sakana AIが着目したのが「事後学習」の活用です。海外製モデルには、開発元の地域のイデオロギーや情報統制の傾向が反映されてしまうことが避けられません。同社はこの問題に対処するため、バイアスの是正と日本の文化・社会的文脈への適応を行う独自データセットを構築し、事後学習を実施しました。
その効果の一例として、ベースモデルである DeepSeek-V3.1-Terminus は政治的にデリケートな質問の72%で回答を拒否していたのに対し、Namazu-DeepSeek-V3.1-Terminus では回答拒否がほぼ0%にまで改善されています。
ベンチマーク結果:能力を維持しながらバイアスを排除
Namazuシリーズの性能は次の3観点で評価されています。
① 基礎能力 AIME’25・MMLU-Redux・GPQA Diamond・LiveCodeBench・IFEvalなど主要ベンチマークにおいて、Namazuはベースモデルとほぼ同等の推論・知識・コーディング性能を維持しています。
② 中立性および事実正確性 日本と他国に関連する政治・歴史・外交テーマへの回答について独自ベンチマークで評価。3モデルすべてでベースモデルを上回る改善が確認されています。
③ 日本語能力 Nejumi Leaderboard4・Swallow LLM LeaderBoard v2・JamC-QAの評価では、ベースモデルや同規模の他社モデルとほぼ同等の日本語性能を達成しています。
なお、ベンチマークの詳細スコアや事後学習手法の詳細については、後日テクニカルレポートの公開が予定されています。
Sakana Chatの使い方と利用条件
Sakana ChatはURLにアクセスするだけで無料で利用できます。主な仕様は次のとおりです。
- 利用可能地域:日本国内からのみ
- アカウント:不要(メールアドレス登録で会話履歴の保存・利用上限の引き上げが可能)
- 機能:Web検索機能を統合しており、リアルタイム情報を収集・統合して回答
- データ利用:入力データはサービス品質向上を目的にモデルの学習・改善に使用される可能性あり
- インフラ:会話履歴・アカウント情報は国内のGoogle Cloudインフラに保存
サービス公開前には約1,000名を対象にβテストを実施しており、フィードバックがNamazuモデルの改善に反映されています。
日本のAI業界への影響と今後の注目点
Sakana AIは、2023年に元Google BrainのDavid Ha氏らが東京で創業したAIスタートアップです。2025年末時点の企業価値は約4,000億円(約26億ドル)と評価されており、日本でも有数のAIスタートアップに成長しています。
今回のSakana Chat公開は、研究・法人向けから一般消費者向けへの展開という戦略的シフトでもあります。日本語・文化的文脈への適応を差別化軸とすることで、ChatGPTやGeminiなどグローバルモデルとの棲み分けを図る狙いがあると考えられます。
同社は今後、複数のNamazuモデルウェイトの公開も準備中としており、研究者・開発者コミュニティへの貢献も予定されています。事後学習技術の汎用性が示されれば、日本以外の他国向けモデル展開にも応用される可能性があります。
よくある質問
Q: Sakana Chatは海外から使えますか?
A: 現時点では日本国内からのみ利用可能です。海外からのアクセスには対応していません。
Q: Namazuシリーズのモデルウェイトは公開されていますか?
A: 記事執筆時点(2026年3月)では未公開ですが、同社は複数モデルのウェイト公開を準備中と公表しています。テクニカルレポートも後日公開予定です。
Q: 入力した内容はAIの学習に使われますか?
A: Sakana AIのFAQによると、入力データはサービス品質向上を目的としたモデルの学習・改善に使用される可能性があります。個人情報の取り扱いについては利用規約を確認してください。
まとめ
Sakana AIは2026年3月24日、日本特化の大規模言語モデルシリーズ「Namazu」(α版)を搭載したAIチャットサービス「Sakana Chat」を無料公開しました。海外モデルに内在するバイアスや検閲傾向を事後学習技術で大幅に改善しながら、基礎能力はベースモデルと同水準を維持している点が特徴です。Web検索機能を備え、アカウント不要で国内から誰でも利用できます。モデルウェイトの公開やテクニカルレポートの発表も予定されており、今後の展開が注目されます。
【用語解説】
- Namazu【なまず】: Sakana AIが開発した日本仕様の大規模言語モデルシリーズ(α版)。既存のオープンウェイト基盤モデルを事後学習で日本向けに適応させたプロトタイプ。
- ポストトレーニング【ぽすととれーにんぐ】: 事前学習済みモデルに対して、目的や文化・地域の要件に合わせた追加学習を行う技術。ゼロからの学習より低コストで効果的なカスタマイズが可能。
- オープンウェイトモデル: モデルの重み(パラメーター)を一般公開しているAIモデル。誰でも自前で動かしたり改変したりできる一方、完全なオープンソースとは区別されることもある。
免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。
引用元:
- [1] Sakana AI 公式ブログ「最大規模のオープン基盤モデルを各国仕様へ適応させる事後学習技術を開発」- https://sakana.ai/namazu-alpha/
- [2] gihyo.jp「Sakana AIが日本特化のオープンLLM「Namazu」とSakana Chatを公開」- https://gihyo.jp/article/2026/03/sakana-chat
- [3] Nikkei Asia「Sakana AI enters chatbot race with Japan-tailored model」- https://asia.nikkei.com/business/technology/artificial-intelligence/sakana-ai-enters-chatbot-race-with-japan-tailored-model
- [4] GIGAZINE「Sakana AI が「Namazu」シリーズと「Sakana Chat」を公開」- https://gigazine.net/gsc_news/en/20260324-sakana-chat-ai-namazu/
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15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。
技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。
また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。