📖 この記事で分かること
- ElevenMusicは2026年4月29日に正式ローンチしたAI音楽プラットフォーム
- ライセンス済みモデルを基盤に、生成・リミックス・収益化を一本化
- 無料プランは1日5曲、有料プランで月最大400曲まで生成可能
- SunoやUdioとの著作権問題を回避した「ライセンスファースト」戦略が特徴
💡 知っておきたい用語
- ステム分離:楽曲をボーカル・ドラム・ベースなど個別のパーツに分解する技術。料理でいえばカレーを具材ごとに取り出すようなもので、部分的な編集や差し替えが可能になる
最終更新日: 2026年05月04日
ElevenMusicとは何か
ElevenLabsが2026年4月29日に正式公開したAI音楽プラットフォームです。テキストプロンプトから楽曲を生成するだけでなく、他ユーザーの曲をリミックスし、そこから収益を得るまでの流れをひとつのサービスに収めています。
同社はAI音声合成で知られてきましたが、2025年8月に音楽生成モデル「Eleven Music」(2語)を先行公開。今回の「ElevenMusic」(1語)はそのモデルを基盤にした消費者向けプラットフォームという位置づけです。両者の名称は意図的に区別されており、発表資料でも混同しないよう明記されています。
ローンチ時点でのコンテンツ規模は以下のとおりです。
- 参加アーティスト数:約4,000組(新興アーティスト中心)
- 収録コンテンツ:自社制作の「The Eleven Album」Vol.1・Vol.2を含む
- 対応プラットフォーム:Web・iOS(iOSアプリは2026年4月1日に先行公開)
ライセンスモデルの設計思想
ElevenMusicが他のAI音楽サービスと一線を画す点は、著作権処理を開発初期から組み込んだ点にあります。
SunoとUdioは2024年に米国レコード産業協会(RIAA)から著作権侵害の疑いで提訴されており、訴訟が続いています。これに対しElevenLabsは、2025年8月の「Eleven Music」モデル公開と同時に、独立系レーベル連合のマーリン・ネットワーク(Adele、Nirvana、Mitskiら所属)と音楽出版会社のコバルト・ミュージック(Beck、Bon Iver、Childish Gambinorら所属)とライセンス契約を締結。さらに同期ライセンスプラットフォームのSourceAudioとも提携しています。
コバルトの声明によれば、アーティストへの参加はオプトイン制であり、新たな収益チャネルの開拓・収益分配・権利侵害への保護といった条件が付与されています。
商用利用の可否はプランによって異なります。
| プラン | 月額(参考) | 商用利用 |
|---|---|---|
| 無料 | $0 | 制限あり(非商用) |
| スターター | 約$5 | オンライン商用利用可 |
| クリエイター | 約$22 | ブロードな商用利用可 |
| プロ | 約$99 | フル機能(44.1kHz出力) |
| エンタープライズ | 要問合せ | TV・ラジオ等含む全用途 |
テレビ・ラジオなど大規模配信はエンタープライズプランが必要です。
プラットフォームの主な機能
ElevenMusicはリスナーを「受動的な聴衆」から「能動的な参加者」へ変える設計を目指しています。
生成:歌詞・メロディ・ムードなどのプロンプトから新曲を作成。ジャンル・スタイル・ボーカルの有無を自由に指定でき、44.1kHzのスタジオ品質で出力されます。日本語を含む複数言語のボーカル生成にも対応しています。
リミックス:既存曲のジャンルやテンポを変更してアレンジが可能。リミックスされた曲もプラットフォーム上で公開・発見できます。
ステム分離:APIを通じて楽曲を個別パーツに分解できます。映像・広告・ゲームとの同期編集に有用で、2025年12月のアップデートで実装されました。
収益化:アーティストは自分のトラックを公開し、他ユーザーのエンゲージメントに応じてロイヤリティを受け取れます。ただし、具体的な報酬計算式はローンチ時点では非公開です。
生成数の上限は以下のとおりです。
- 無料:1日5曲
- 有料プラン(9.99ドル/月):月最大400曲
競合との比較と業界への影響
ElevenMusicが参入する市場には、Suno・Udio・Boomy・Soundfulなど複数のプレイヤーがすでに存在します。ElevenLabsの差別化軸はライセンスの透明性と、音声・音楽・効果音を横断した総合的な音声プラットフォームとしての展開です。
同社は2026年2月に500百万ドルのシリーズCラウンドを110億ドル評価で完了しており、音楽事業への投資余力は十分に確保されています。ミュージック・ストラテジー責任者のデレク・クルノワは「アーティストやソングライターと共に構築する、ではなく彼らを迂回して構築することはしない」と述べており、業界との共存路線を明確にしています。
一方で課題も残っています。具体的な収益分配の仕組みが未公表であること、参加アーティストの大半が新興勢力にとどまること、エンタープライズ以外のプランではTV・ラジオ配信が使えないことなど、用途によって制限が生じます。
将来の動向として、マーリン・コバルト所属のアーティストが上位モデル「Eleven Music Pro」の開発に参加できるようになる予定と報じられています。リリース時期は「今後数カ月以内」とされていますが、詳細は未確認です。
よくある質問
Q: 無料プランで商用利用はできますか?
A: 無料プランは商用利用に対応していません。商用利用にはスタータープラン(月額約5ドル)以上への加入が必要です。ただし、テレビやラジオなど大規模な配信はエンタープライズプランが対象となります。
Q: 日本語の曲は作れますか?
A: はい。Eleven Musicは英語・スペイン語・フランス語・ドイツ語・日本語など複数言語のボーカル生成に対応しています。
Q: SunoやUdioとの違いは何ですか?
A: 最大の違いはライセンス体制です。ElevenMusicはマーリン・コバルトとの正規契約を基盤としており、モデルの学習データが権利処理済みであることを明示しています。SunoとUdioは著作権侵害訴訟を抱えており、商用利用のリスク管理の観点では現時点でElevenMusicに優位性があります。
まとめ
ElevenLabsは2025年8月に音楽生成モデルを公開してから約9カ月で、ファンが発見・創作・収益化まで完結できるプラットフォームへと拡張しました。ライセンスファーストの設計は、訴訟リスクを抱える競合との明確な差別化につながっています。収益分配の詳細や「Eleven Music Pro」の仕様など未公開の情報も多く、今後の続報が注目されます。広告・映像・ポッドキャスト用BGMを検討しているクリエイターは、まず無料プランで音質と操作感を試してみると判断しやすいでしょう。
【用語解説】
- Eleven Music【イレブン ミュージック】: ElevenLabsが2025年8月に公開したAI音楽生成モデル。テキストプロンプトから楽曲を生成し、商用利用が可能。今回公開の「ElevenMusic」(1語)プラットフォームの基盤技術。
- マーリン・ネットワーク: 世界の独立系レコードレーベルが加盟する団体。Adele、Nirvana、Mitskiなどの著作権管理を担い、ElevenLabsにAI学習用ライセンスを提供している。
- オプトイン: 任意参加の仕組み。コバルト所属アーティストは自らの意志でAI学習データへの提供を選択でき、強制参加ではない点が強調されている。
免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。
引用元:
- [1] ElevenLabs公式「Eleven Music – AI Music Generator」- https://elevenlabs.io/music
- [2] ElevenLabs公式ブログ「Eleven Music: new tools for exploring, editing and producing music with AI」- https://elevenlabs.io/blog/eleven-music-new-tools-for-exploring-editing-and-producing-music-with-ai
- [3] ElevenLabs公式「The Eleven Album」- https://elevenlabs.io/eleven-album
15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。
技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。
また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。