📖 この記事で分かること
- GoogleがAI音楽生成モデルの上位版「Lyria 3 Pro」を発表した
- 最長3分間、イントロ・サビ・ブリッジなど楽曲構造を指定して生成できる
- GeminiアプリやGoogle Vids・Vertex AIなど6つのプラットフォームに展開
- SynthIDウォーターマークで全出力にAI識別印を付与し権利保護を強化
💡 知っておきたい用語
- SynthID【シンスアイディー】:Googleが開発した、AI生成コンテンツに埋め込まれる不可視のデジタル透かし技術。音楽が編集・加工された後でも残り続けるため、どのプラットフォームでもAI制作かどうかを検出できる。
最終更新日: 2026年03月26日
Lyria 3 Proとは——30秒から3分への飛躍
GoogleのAI音楽生成モデルが、短いクリップから本格的な楽曲制作ツールへと進化しました。2026年3月25日、Google DeepMindはLyria 3の上位モデル「Lyria 3 Pro」を発表し、開発者・一般ユーザー向けへの段階的な提供を開始しました。
Lyria 3は2026年2月にGeminiアプリへ統合され、最長30秒のトラック生成が可能でした。今回のProバージョンはその約6倍にあたる最長約3分間の楽曲を生成でき、イントロ・バース・コーラス・ブリッジといった楽曲構造をプロンプトで細かく指定することが可能です。
Lyria 3の過去記事はこちら↓
主な機能と利用できるプラットフォーム
Lyria 3 Proの核心は「プロフェッショナルグレードの楽曲構造認識」にあります。これまでのモデルが「創作のきっかけ」を提供するにとどまっていたのに対し、Proモデルはスタジオクオリティの出力を目指して設計されています。
提供プラットフォームは以下の通りです。
- Geminiアプリ: 有料プランのサブスクライバー向けに順次展開。1日の生成上限はAI Plusが10曲、Proが20曲、Ultraが50曲
- Google Vids: Workspace顧客およびGoogle AI Pro・Ultraサブスクライバー向けに2026年3月25日週より展開開始。動画に合わせたカスタム音楽を追加可能
- Vertex AI: 企業向けにパブリックプレビューを提供。ゲームのサウンドトラック生成や音楽プラットフォームへの統合などスケールした音声制作に対応
- Google AI Studio / Gemini API: 開発者向けにパブリックプレビューを提供。Lyria RealTimeとあわせてAI Studioで利用可能
- ProducerAI: Googleが買収した音楽制作ツール。Lyria 3 Proを活用したエージェント型ワークフローでソングライターをサポート
- Music AI Sandbox: ミュージシャン・プロデューサー向けの実験的ツール群。Lyria 3開発にもその知見が活かされている
また、テキストに加えて画像入力にも対応。画像をアップロードすることで、その雰囲気や色調をもとに楽曲のムード・スタイルを生成に反映させることができます。
ProducerAIの過去記事はこちら↓
権利保護とAI音楽の課題
Lyria 3 Proの発表は、AI音楽が急拡大している時期と重なります。Spotifyでは毎日約5万曲のAI生成トラックがアップロードされていると報じられており、ストリーミング各社によるAI楽曲の識別・管理が大きな課題となっています。
Googleはこれに対し、2つのアプローチで対応しています。
- 学習データの管理: Lyria 3はGoogleおよびYouTubeが利用権を持つ素材と、パートナー契約に基づくデータのみを使用して学習していると明示しています
- SynthIDウォーターマーク: Lyria 3とLyria 3 Proの全出力に不可視の電子透かしを付与。音声が編集・加工された後でも検出可能で、AIコンテンツのトレーサビリティ(追跡可能性)を確保します
また、プロンプトにアーティスト名が含まれていても、そのアーティストの声や楽曲スタイルをそのまま模倣するのではなく、「広い意味でのインスピレーション」として解釈する設計になっているとGoogleは説明しています。
今後の注目点——Suno・Udiaとの競合に加速
今回の発表で注目されるのは、Googleの展開スピードです。2025年4月のLyria 2(Music AI Sandbox)、2026年2月のLyria 3(Gemini統合)、そして2026年3月のLyria 3 Proと、通常は年単位だった製品サイクルが数か月単位に短縮されています。
AI音楽の「バイラル期」を牽引してきたSunoやUdiaといったスタートアップに対し、GoogleはWorkspace・Geminiの広大なディストリビューションネットワークを武器に本格参入する形です。
一方、クリエイターの権利保護や収益分配の枠組みが技術の進展に追いつけるかどうかは、引き続き業界全体の課題として残ります。Lyria 3 ProがGoogle Vidsや企業向けVertex AIとの統合を強化していく中で、音楽制作の現場がどのように変化していくかが注目されます。
よくある質問
Q: Lyria 3 ProはどのGeminiプランで使えますか?
A: 有料プランのGoogle AI Plus、Pro、Ultraサブスクライバーが利用できます。無料プランユーザーは現時点ではLyria 3 Proにアクセスできません。1日の生成上限はAI Plusが10曲、Proが20曲、Ultraが50曲です。
Q: 生成した音楽は商用利用できますか?
A: 利用規約およびGen AI禁止利用ポリシーへの準拠が前提となります。すべての出力にはSynthIDウォーターマークが付与されます。具体的な商用利用の条件については、Googleの公式ドキュメントを確認してください。
Q: Lyria 3 ProとLyria 3(クリップ版)の違いは?
A: Lyria 3(クリップ版)が最長30秒であるのに対し、Lyria 3 Proは最長約3分の楽曲を生成できます。また、Proモデルはイントロ・バース・コーラス・ブリッジといった楽曲構造の細かい指定が可能で、よりプロダクション向けの出力品質を持ちます。
まとめ
GoogleはLyria 3 Proの発表により、AI音楽生成を30秒クリップから3分間のフルソングへと大幅に拡張しました。Geminiアプリ・Google Vids・Vertex AI・ProducerAIなど6つのプラットフォームへの統合と、SynthIDによる権利保護の組み合わせは、スタートアップ主導だったAI音楽市場にGoogleが本格参入したことを示しています。楽曲構造の細かい指定が可能になったことで、動画クリエイターや企業ユーザーへの実用的な価値が高まっており、今後のアップデートが注目されます。
【用語解説】
- Lyria 3 Pro【リリア・スリー・プロ】: Google DeepMindが開発したAI音楽生成モデルの上位版。最長約3分間の楽曲生成と、楽曲構造の詳細指定に対応している。
- SynthID【シンスアイディー】: Googleが開発した、AI生成コンテンツに埋め込まれる不可視のデジタル透かし技術。動画・音声・画像・テキストに対応しており、加工後も検出可能。
- Vertex AI【バーテックス・エーアイ】: Google Cloudが提供するMLプラットフォーム。企業向けにAIモデルのデプロイや大規模な推論処理を提供しており、Lyria 3 ProもここからAPI経由で利用できる。
- プロダクションAI: 実験段階を超え、業務・商用コンテンツの制作フローに直接組み込めるレベルのAIツールを指す業界用語。
免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。
引用元:
- [1] Google The Keyword(公式ブログ)- Lyria 3 Pro: Create longer tracks in more Google products – https://blog.google/innovation-and-ai/technology/ai/lyria-3-pro/
- [2] Google Developers Blog – How developers can use Lyria 3 for AI music generation – https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/lyria-3-developers/
- [3] Google DeepMind – Lyria 3(公式モデルページ) – https://deepmind.google/models/lyria/
- [4] Google Gemini – AI music generation(公式) – https://gemini.google/overview/music-generation/
- [5] Winbuzzer – Google’s New Lyria 3 Pro AI Music Model Generates 3 Minute Tracks – https://winbuzzer.com/2026/03/25/google-launches-lyria-3-pro-ai-music-generation-model-xcxwbn/
15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。
技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。
また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。