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Jan 30 2026

OpenAIが科学者向けAIツール「Prism」を無料公開

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📖 この記事で分かること

  • OpenAIが論文執筆支援AIツール「Prism」を発表した
  • GPT-5.2搭載で手書き数式もLaTeXに自動変換できる
  • ChatGPTアカウントがあれば誰でも無料で使える
  • 2026年は「AIと科学」の変革の年になる可能性がある

💡 知っておきたい用語

  • LaTeX(ラテフ): 科学論文でよく使われる文書作成システム。Wordのようなソフトとは違い、コードを書いて数式や図表を美しく整形できる。理系の研究者にとっては必須だが、習得に時間がかかることで知られている。

最終更新日: 2026年01月30日

OpenAI「Prism」とは何か

OpenAIが2026年1月27日、科学者向けの新しいAIツール「Prism」を発表しました。Prismは、論文執筆から共同編集までを一つのプラットフォームで完結できるクラウドベースのワークスペースです。

最大の特徴は、ChatGPTアカウントを持っていれば誰でも無料で利用できる点にあります。プロジェクト数やコラボレーター数に制限はなく、サブスクリプション契約も不要です。OpenAIは「科学研究をより多くの人に開放したい」という意図を明らかにしています。

Prismの基盤となっているのは、OpenAIが買収したCrixetというクラウドベースのLaTeXプラットフォームです。CrixetはPrismに統合されたため、今後は単独サービスとしては提供されません。

  • https://prism.openai.com/
  • 対象: ChatGPTアカウント保有者(個人)
  • 価格: 無料
  • プロジェクト数: 無制限
  • コラボレーター数: 無制限
  • 今後の展開: Business、Team、Enterprise、Educationプラン向けは近日対応予定

GPT-5.2が実現する論文執筆支援の中身

Prismには、OpenAIの最新モデル「GPT-5.2」が搭載されています。同社はこれを「数学的・科学的推論において最も高度なモデル」と位置づけています。

従来のChatGPTと異なる点は、GPT-5.2が文書全体のコンテキストを理解しながら動作することです。数式、引用、図表、文章構成といった論文の要素を把握したうえで、適切な提案や修正を行います。別ウィンドウでチャットするのではなく、執筆中の文書内でAIが機能する設計になっています。

主な機能は以下のとおりです。

  • 論文の下書き・修正: 文書全体の文脈を踏まえた執筆支援
  • 数式の作成・整理: LaTeX形式での数式生成と最適化
  • 文献検索: arXivなどから関連論文を検索・参照
  • ホワイトボード変換: 手書きの数式や図をLaTeX形式に自動変換
  • リアルタイム共同編集: 複数人での同時作業が可能
  • 音声編集: 音声入力による文書修正にも対応

特に「ホワイトボード変換」機能は、既存のLaTeXツールでは実現が難しかった機能として注目されています。手書きのスケッチやメモをそのまま論文用の図表に変換できるため、研究者の作業効率が大きく改善される可能性があります。

なぜ今、科学者向けツールなのか

OpenAIがPrismを開発した背景には、ChatGPTへの科学関連クエリの急増があります。同社の内部データによると、ChatGPTには毎週約840万件の先端科学・数学に関する質問が寄せられています。2025年には科学関連のクエリが前年比47%増加したとのことです。

OpenAIのKevin Weil VP of Scienceは記者会見で「2025年がAIとソフトウェア開発の年だったとすれば、2026年はAIと科学の年になる」と述べています。

この発言の背景には、すでに学術分野でAI活用が進んでいる実績があります。数学分野では、AIモデルが長年未解決だったエルデシュ問題の証明に貢献した事例が報告されています。2025年12月には、GPT-5.2 Proを活用して統計理論の中心的な定理に新たな証明を与えた論文も発表されました。この論文では、人間の研究者はプロンプト入力と結果の検証のみを担当したとされています。

OpenAIは、CursorやWindsurfといったコーディングエージェントがソフトウェア開発を効率化したのと同様に、Prismが科学研究のワークフローを変革することを狙っています。

既存ツールとの違いと課題

Prismの競合として意識されているのは、Anthropicの「Claude Code」やその他のコーディングエージェントです。TechCrunchの報道によると、OpenAIはPrismを「Claude Codeが開発者に対して行ったことを、科学者に対して実現するツール」と位置づけています。

既存のLaTeXエディタとの主な違いは以下の点です。

比較項目従来のLaTeXツールPrism
AI支援外部チャットツールを併用文書内で統合動作
共同編集環境設定が複雑クラウドベースで即時反映
図表作成TikZコマンドを手動入力手書きスケッチから自動変換
文献検索別ツールで検索・コピープラットフォーム内で完結
価格ツールにより有料無料

ただし、課題も指摘されています。Kevin Weil氏自身が「参考文献が正しいかどうかを検証する責任は研究者にある」と述べているように、AIの出力を鵜呑みにすることのリスクは残ります。また、AI支援による論文の品質や再現性への影響については、まだ十分な検証がなされていません。

今後の展開と注目点

Prismは現在、個人のChatGPTアカウント向けに提供されています。OpenAIは今後、ChatGPT Business、Team、Enterprise、Educationプラン向けにも展開する予定です。より高度なAI機能については、将来的に有料プランで提供される可能性があると同社は示唆しています。

研究者コミュニティにとっての注目点は、この無料提供がどこまで続くかという点です。無制限のプロジェクト数・コラボレーター数という条件は、資金力のない研究者や学生にとって大きな魅力ですが、持続可能なビジネスモデルになるかは未知数です。

また、ヘルスケア・ライフサイエンス分野でのAI競争も激化しています。OpenAIは「ChatGPT Health」を、Anthropicは「Claude for Healthcare」を発表しており、専門分野向けAIツールの開発競争は今後さらに加速すると予想されます。


よくある質問

Q: Prismを使うのに費用はかかりますか?

A: ChatGPTアカウントを持っていれば無料で利用できます。プロジェクト数やコラボレーター数に制限はなく、サブスクリプション契約も不要です。ただし、将来的に一部の高度な機能は有料プランでの提供になる可能性があります。

Q: 日本語の論文執筆にも対応していますか?

A: OpenAIの公式発表では対応言語について明確な言及がありません。GPT-5.2は多言語対応のモデルですが、日本語でのLaTeX文書作成における精度については、実際の使用を通じて確認する必要があります。

Q: 既存のLaTeXファイルをPrismにインポートできますか?

A: Prismはクラウドベースの LaTeXネイティブなワークスペースとして設計されています。既存のLaTeXプロジェクトの移行については、公式ドキュメントで詳細を確認することをお勧めします。


まとめ

OpenAIが発表した「Prism」は、科学論文の執筆を支援するAIツールです。GPT-5.2を搭載し、LaTeXベースの論文作成から共同編集までをワンストップで提供します。ChatGPTアカウントがあれば誰でも無料で利用でき、プロジェクト数やコラボレーター数に制限がない点が特徴です。2025年にソフトウェア開発分野でAIが大きな変革をもたらしたように、2026年は科学研究分野でも同様の変化が起きる可能性をOpenAIは示唆しています。


【用語解説】

  • LaTeX【ラテフ】: 科学論文や技術文書の作成に広く使われる組版システム。コマンドを入力して文書を整形する方式で、複雑な数式や図表を美しく表現できる。
  • GPT-5.2【ジーピーティーゴーテンニ】: OpenAIが開発した大規模言語モデル。数学的・科学的推論に特化した能力を持ち、Prismの中核技術として搭載されている。
  • arXiv【アーカイブ】: 物理学、数学、コンピュータサイエンスなどの論文プレプリント(査読前原稿)を公開するオンラインリポジトリ。研究者が最新の研究成果をいち早く共有する場として活用されている。

免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。


引用元:

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KOJI TANEMURA

15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。

技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。

また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。