📖 この記事で分かること
- Inkling 2 Small の規模と対応する入力
- Tinker での料金とコンテキスト長の記載
- 重みの公開時期とその条件
- 導入を評価する開発者が確認すべき点
💡 知っておきたい用語
- MoE:大勢の専門家がいる窓口で、質問ごとに数人だけが対応するように、モデルの一部だけを動かす構成
- 重み:モデルが学習で身につけた内容を収めた数値データ。料理でいえば、完成品ではなくレシピを受け取るようなもの
最終更新日: 2026年11月7日
▶ 公式ページ
- Tinker のモデルと料金(Tinker Docs)
- Inkling 2 Small の発表(Thinking Machines)
- Inkling 2 Small モデルカード(Thinking Machines)

Inkling 2 Small の発表概要
この記事のポイント
- Thinking Machines が 2026 年 11 月 5 日、Inkling 2 Small(2026年11月時点)を発表しました。総パラメータは 594B、アクティブは 17B です。
- 当初は重み非公開で Tinker から提供し、Apache 2.0 での重み公開は来週の意向です。
- コンテキスト長は Tinker の料金表が 256K、モデルカードが最大 100 万トークンです(2026年11月時点)。
大規模なモデルを自社環境で動かす前提で評価している開発者にとって、Apache 2.0 で使える候補が 1 つ増える見込みです。ただし、当初の提供経路は Thinking Machines のサービスである Tinker で、重みはまだ手元で扱えません。
重みの公開について、同社は外部の安全性テストとレッドチーミング(攻撃者の視点で弱点を探す検証)の完了後としています。発表文の時期の表現は「next week」で、確定した公開日ではなく意向として書かれています。
仕様と料金の要点
Inkling 2 Small は、MoE【エムオーイー】(入力ごとにモデルの一部だけを動かす構成)を採用したモデルです。画像入力と、推論にかける量を変えられる「variable effort」に対応します。
| 項目 | 公式の記載 |
|---|---|
| パラメータ数 | 総パラメータ 594B、アクティブ 17B |
| 入力 | 画像にネイティブ対応、音声は非対応 |
| コンテキスト長 | モデルカード: 最大 100 万トークン / Tinker の料金表: 256K |
| プリフィル(入力の読み込み処理) | 100 万トークンあたり 0.30 ドル、キャッシュ時 0.03 ドル(2026年11月時点) |
| サンプリング(出力の生成処理) | 100 万トークンあたり 1.00 ドル(2026年11月時点) |
| 重み | 当初は非公開。来週 Apache 2.0 で完全な重みを公開する意向 |
料金は Tinker の料金表のサーバーレス推論(ベータ)に載っているものです。サーバーレス推論は、実行環境を自分で用意せずにモデルを呼び出す提供形態を指します。
評価時に見落としやすいのは、コンテキスト長の差です。モデルカードは最大 100 万トークンとしていますが、料金表の行は 256K で、モデルの識別子にも 262144 という値が入っています。今回確認した資料だけでは、Tinker で 256K を超える入力を扱えるかどうかは分かりません。
開発者の評価にどう影響するか
影響が大きいのは、長い入力を扱う処理と、自社環境での運用を前提にした評価です。どちらも、モデルカードの数字だけで設計を固めると前提がずれる恐れがあります。
たとえば、長い技術文書やログをまとめて読み込ませる処理を実装している開発者が、100 万トークンを前提に分割処理を省く設計にしたとします。Tinker 上の上限が料金表の 256K どおりなら、その設計は成り立ちません。同じ長いプロンプトを繰り返し送る処理では、キャッシュ時のプリフィル料金が通常の 10 分の 1 になります。ただし、料金表の該当行にキャッシュの適用条件は書かれていないため、費用の見積もりでは適用条件を別に確かめる必要があります。
自社環境で動かす場合は、必要なメモリを 17B ではなく総パラメータの 594B を基準に見積もる必要があります。MoE は一度に動く部分が一部でも、重み全体を置く場所が要るからです。
Tinker の評価結果をそのまま自社環境の見込みにも使えるとは限りません。料金表の識別子には sampling-nvfp4 という文字列が含まれており、公開される重みを自社で動かしたときに同じ結果になるかは、今回の資料からは確認できません。
用途の面では、次の 2 点が制約になります。
- 音声には対応しないため、録音データを直接渡す処理には組み込めません。
- モデルカードは、医療、法務、安全上重要な意思決定の分野への導入を避けるよう求めています。
Tinker に送れるデータであれば、現時点でも料金表の条件で評価を進められます。社外に出せないデータを扱うチームは、重みの公開とライセンスの実物を確認してから検証を始めるのが現実的です。
編集部の見方
編集部は、Inkling 2 Small をいまの段階では「Tinker で評価を始めるモデル」と捉え、本番の構成は重みの公開を確認してから決めるのがよいと見ます。
- 根拠 1: 重みの公開は意向の段階で、外部の安全性テストとレッドチーミングの完了が条件になっています。来週という時期を前提に、移行の予定を固定するのは早いと考えます。
- 根拠 2: コンテキスト長の記載が、モデルカードの最大 100 万トークンと料金表の 256K で異なります。長い入力を扱う処理では、この差が設計を左右します。
- 根拠 3: アクティブは 17B でも、総パラメータは 594B です。自社運用の費用は、アクティブの数字から受ける印象より大きくなる可能性があります。
この見方が変わる条件は、完全な重みが Apache 2.0 で実際に公開され、使える環境でのコンテキスト長の上限も確認できたときです。そこまでそろえば、自社環境での本番候補として評価を進める根拠が整います。
よくある質問
Q: Inkling 2 Small の重みはいま入手できますか?
A: 当初は重み非公開で、Tinker から提供されます。公式は、外部の安全性テストとレッドチーミングの完了後、来週 Apache 2.0 で完全な重みを公開する意向としています。
Q: Tinker で 100 万トークンの入力を扱えますか?
A: 今回確認した資料だけでは分かりません。モデルカードの記載は最大 100 万トークンですが、Tinker の料金表の行は 256K です。
Q: 音声入力には対応していますか?
A: 対応していません。公式は、画像入力にはネイティブ対応する一方で、音声には対応しないとしています。
まとめ
Inkling 2 Small は総パラメータ 594B、アクティブ 17B の MoE モデルで、当初は重み非公開のまま Tinker から提供されます。Apache 2.0 での重み公開は来週の意向ですが、外部の安全性テストとレッドチーミングの完了が条件です。導入を判断するうえでは、256K と最大 100 万トークンという記載の差と、594B 規模の運用費用が主な確認点になります。
【用語解説】
- レッドチーミング: 攻撃者の立場でモデルを試し、危険な出力や弱点を探す検証です。
- プリフィル: モデルが出力を始める前に、入力全体を読み込む処理です。
- サーバーレス推論: 実行環境を自分で用意せず、提供元の環境でモデルを呼び出す形態です。
引用元:
- [1] Inkling 2 Small(Thinking Machines)
- [2] Inkling 2 Small Model Card(Thinking Machines)
- [3] Models and Pricing(Tinker Docs)
この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。
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15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。