K2 Horizon は、UAE の MBZUAI が設立した研究機関 IFM が2026年9月3日に公開した、0.9Bから375Bまでの6モデルからなるオープンモデル群です。
📖 この記事で分かること
- K2 Horizonが0.9Bから375Bまで6モデル同時公開されたこと
- 「完全オープン」の中身がモデルサイズで異なる実情
- IFM公表値で見た7Bと375Bの性能水準
- 再現実験を始める前に確認すべき点
💡 知っておきたい用語
- 完全オープン: 重みだけでなく、学習に使ったデータや手順書まで公開する状態。料理でいえば完成品だけでなくレシピと材料の産地まで開示すること
最終更新日: 2026年9月6日
▶ 公式ページ
- K2 Horizon コレクション(Hugging Face)
- K2 Horizon プレスリリース(Institute of Foundation Models)
- MBZUAI 公式ニュース(MBZUAI)

K2 Horizon の公開内容
この記事のポイント
- UAEのMBZUAIが設立した研究機関IFMが2026年9月3日、AIモデル群「K2 Horizon」6種をApache 2.0で公開しました(2026年9月時点)。
- 0.9Bから375Bまでを一度に出し、重み・コード・学習データ・手法まで開くと表明しています。
- 発表3日後の9月6日時点では、学習データまで実際に開くのは小型から中型に限られます。
Institute of Foundation Models(IFM)は2026年9月3日、6種類のAIモデルからなる「K2 Horizon」を公開しました。IFMはアブダビのMBZUAI(モハメド・ビン・ザイード人工知能大学)が2025年5月に設立した研究ラボで、アブダビ・シリコンバレー・パリの3拠点で活動しています。OpenAIやAnthropicといったAIラボの発表ではありません。
内訳は0.9B、3.7B、7B、32B(dense)、36B-A4B(sparse)、そしてフラッグシップの375B-A23Bです。ライセンスはすべてApache 2.0(2026年9月時点)。6モデルはアーキテクチャ・語彙・学習手法・デプロイツールを共有し(0.9Bのみ語彙が小さい)、小さいモデルで試作して大きいモデルへ移す際に構成を組み替えずに済む設計だと説明されています。想定用途は0.9Bが腕時計やメガネなどの制約環境、3.7Bと7Bがスマートフォン、32Bと36B-A4Bがローカルホスティングやオンプレミス、375B-A23Bが企業向けです。
技術面では3点が挙げられています。トークンのブロックを並列生成して品質を落とさずに約3倍高速化する「diffusion distillation」、計算量を増やさずに推論性能を上げる「Mixture of Value Attention(MoVA)」、そしてタスクを最もコスト効率の良いモデルへ振り分ける動的モデルルーティングです。入手経路はHugging Face、vLLM、SGLangで、APIはCompass、Cerebras、Nebiusなどの推論パートナー経由となります。
「完全オープン」の中身はモデルサイズで違う
IFMは「オープンウェイトにとどまらない完全オープン」を今回の売りに据えていますが、発表3日後の2026年9月6日時点で確認すると、その状態はモデルサイズによって差があります。
7Bのモデルカードは「学習データとレシピ、学習コード、評価リソースは公開済み(public)」と現在形で記載しています。一方フラッグシップの375B-A23Bのモデルカードは「最終チェックポイントは公開した。中間チェックポイントと、データおよび学習コードは今後公開する(will be released)」と将来形で書かれています。実際、375Bのカードが参照する学習データ2件(K2-Horizon-Pretrain-Data、K2-Horizon-Midtrain-Data)は同時点でHTTP 401を返し、一般には開きません。同じIFMが公開しているTxT360-v2やSFT-Reasoningなどのデータセットは問題なく開けるため、リポジトリ全体の障害ではなく公開時期の差と見られます。
つまり現時点では、小型から中型は学習データまで揃っている一方、フラッグシップは重み先行でデータと学習コードは後追い、という状態です。IFMが公開を撤回したわけではありませんが、375Bを対象に再現実験や学習過程の分析を計画している場合は、着手前にデータ公開の状況を確認する必要があります。Hugging Face上のK2 Horizon関連リポジトリは同時点で17件が公開済みで、GGUF量子化版とFP8版も揃っています。
IFM公表値で見た性能
以下はいずれもIFM公表値(モデルカード掲載)で、第三者による独立検証ではありません。
375B-A23BはMoE【エムオーイー】構成で、総パラメータ375Bのうち1トークンあたり23Bが動作し、コンテキスト長は512K(524,288トークン)です。Terminal-Bench 2.1が70.2で、GLM 5.2(max)の77.9、GPT 5.6 Luna(max)の80.9、Claude Sonnet5(max)の80.5には届きません。一方でToolathlon Verified 65.3、MCPMark 67.7、GPQA Diamond 87.3を示し、IFMは最大2.6倍の規模のオープンウェイトMoEと同等以上だと主張しています。比較対象にはNemotron 3 Ultra(550B)やInkling xhigh(975B)が並びます。
特徴的なのはAA-Omniscienceの2指標です。非ハルシネーション率は74.7で、GPT 5.6 Lunaの7.0やTerraの10.0を大きく上回ります。ただし同じベンチマークの正答率は23.0で、Lunaの43.0やTerraの45.0に負けています。誤った断定を避ける代わりに、答えられない範囲も広いという読み方になります。
7Bはdense構成でコンテキスト長512K。SWE-bench Verifiedが70.6で、モデルカード掲載の参照モデルであるQwen3.5-9B(50.8)、Granite 4.2-8B(47.7)、Gemma 4-12B(30.6)を上回ります。HMMT Feb 2026は73.3、Terminal-Bench 2.1は39.1、BrowseCompは59.0です。なおBrowseCompについてIFMは、自社モデルはDeepSeek-V3.2技術報告のDiscard-all@95kプロトコルを使用しており、比較モデルはハーネスが異なりうると注記しています。
編集部の見方
編集部は、この発表で最も価値があるのは375Bの順位ではなく、7B前後で学習データまで揃った点だと見ています。
- 根拠1: 7Bのモデルカードは学習データ・レシピ・学習コード・評価リソースを公開済みと明記しており、実際にIFMのデータセットは参照可能です。学習過程まで踏み込んだ検証は、まずこのサイズで可能になります。
- 根拠2: 7BのSWE-bench Verified 70.6は、参照モデルとして並ぶQwen3.5-9BやGranite 4.2-8Bに対して20ポイント前後の差があります(IFM公表値)。スマートフォンで動く規模で実務的な作業を任せられる可能性が上がります。
- 根拠3: フラッグシップ375Bは現時点でデータと学習コードが未公開のため、「完全オープン」の看板を根拠に採用判断をするには材料が足りません。
この見方が変わる条件は、375Bの学習データと中間チェックポイントが実際に公開されたときです。学習途中の挙動まで追える大規模モデルは現状ほとんどなく、公開されれば研究用途での価値は大きく変わります。
よくある質問
Q: K2 Horizonは商用利用できますか。
A: ライセンスはApache 2.0(2026年9月時点)で、商用利用が可能な条件です。実際の適用時は各モデルカードの記載を確認してください。
Q: どのサイズから試すのが現実的ですか。
A: 学習データまで揃っているのは小型から中型です。手元での再現性を重視するなら7Bや3.7B、GGUF量子化版が用意されているサイズから始める形になります。
Q: ベンチマークの数値は独立検証されていますか。
A: 本記事に挙げた数値はIFM公表値で、第三者機関による検証結果ではありません。BrowseCompのように評価ハーネスが比較対象と異なる旨がIFM自身から注記されている項目もあります。
まとめ
IFMは2026年9月3日、0.9Bから375Bまでの6モデルからなるK2 HorizonをApache 2.0で公開しました。重み・コード・学習データ・手法まで開く方針を掲げていますが、9月6日時点で学習データまで参照できるのは小型から中型で、375B-A23Bは重み先行の状態です。7BのSWE-bench Verified 70.6(IFM公表値)は同規模帯の参照モデルを上回っており、学習過程まで追える公開モデルとしての価値は小型側にあります。
同様に大規模モデルを完全公開の形で出した事例は、以下の記事でも取り上げています:
【用語解説】
- オープンウェイト: モデルの重みだけを公開し、学習データや学習コードは非公開にする形態。K2 Horizonはこれとの差別化を掲げています。
- MoE【エムオーイー】: 複数の専門部分を持ち、入力ごとに一部だけを動かす構成。375B-A23Bは375B中23Bだけが1トークンあたり動作します。
- チェックポイント: 学習途中や完了時点のモデルを保存したもの。中間チェックポイントが公開されると、学習の進行に伴う能力変化を追えます。
引用元:
- [1] K2 Horizon Press Release(Institute of Foundation Models)
- [2] MBZUAI’s Institute of Foundation Models launches K2 Horizon(MBZUAI)
- [3] K2-Horizon-375B-A23B モデルカード(Hugging Face)
- [4] K2-Horizon-7B モデルカード(Hugging Face)
この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。
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15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。