📖 この記事で分かること
- Delulu Camで何ができるかと提供元
- リアルタイム変換を支える技術の要点
- 使える配信・会議・録画サービスの範囲
- 無料版と有料版の違い、対応OS
💡 知っておきたい用語
- 仮想カメラ:実機のカメラ映像をソフト側で加工してから、ZoomやDiscordなど別アプリの「カメラ入力」として渡す仕組み。受け取り側からは普通のカメラに見える
最終更新日: 2026年5月5日
Delulu Camは「カメラに映る自分」をAIアバターに置き換えるアプリ
Delulu CamはAIスタートアップのDecartが提供するデスクトップアプリで、Webカメラの映像をリアルタイムで別の人物やキャラクターに変換できる。アップロードした画像をそのままアバターにすることも、付属のクリエーションスタジオでオリジナルアバターを作ることもできる。
特徴的なのは、ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teams、Discord、Slack、OBS、Streamlabsなどのカメラを使うアプリにそのまま仮想カメラとして接続できる点。配信、ビデオ会議、録画、ライブチャットの場面で「別人として」あるいは「別キャラクターとして」登場できる仕組みだ。
執筆時点での動作環境はWindows 10以降で、macOS版は準備中とされる。基本機能は無料で使えるが、1セッションあたりの利用時間に上限がある(後述)。モバイル向けには「Delulu by Decart」がiOSとAndroidで別途配信されている。
基盤となるDecartの「Lucy 2.0」がリアルタイム性を支える
技術的な要点は、Delulu CamがDecartのリアルタイム動画変換モデル「Lucy 2.0」を基盤にしていることにある。Lucy 2.0は2026年1月26日(現地時間)に発表された世代モデルで、1080p解像度、30fps、フレームあたり100ミリ秒未満のレイテンシで動画を変換する。
従来の動画生成モデルが「撮影→処理→出力」という流れを踏むのに対し、Lucy 2.0はフレーム単位で逐次生成する。3DモデルやARオーバーレイを使わず、純粋に拡散モデル【かくさんモデル】でピクセルを再構築する点も従来との差分だ。Decartは長時間使用時の画質劣化を抑える「Smart History Augmentation」と呼ぶ手法を採用しており、自身が出力した不完全なフレームを学習データに混ぜることでドリフト(時間経過による画像のずれ)を補正する設計になっている。
実行基盤はAWS Trainium3とNVIDIA H100が中心。Decart APIプラットフォーム経由で利用する場合の課金は秒単位(執筆時点で約0.05ドル/秒)となっており、Delulu Cam自体はこのAPIをラップしたエンドユーザー向け製品という位置づけになる。
配信・会議・録画のどこでも使える
Delulu Camは「カメラを使うほぼすべてのアプリ」で動作する。公式FAQが挙げているのは以下のサービス群だ。
- ビデオ会議:Zoom、Google Meet、Microsoft Teams、Discord、Slack
- ストリーミング・録画:OBS、Streamlabs、Riverside、Loom
- ランダムビデオ系:OmeTV、Chatroulette
- 配信プラットフォーム:Twitch、YouTube、Kick、TikTok Live
- ブラウザベースの動画ツール全般
仮想カメラとして登録される仕組みのため、各アプリのカメラ選択画面で「Delulu」を選ぶだけで切り替わる。アバターはあらかじめ用意されたPixar風、アニメ調、リアリスティック、粘土風の4スタイルに加え、自前で作ったものも切り替えながら利用できる。
配信者向けには姉妹サービスの「Delulu Stream」があり、チャットからのコマンドで配信者の見た目を変える、課金やスーパーチャットと変身を連動させるといった使い方ができる。OBSやその他の配信ソフトと組み合わせて使う前提のツールで、こちらは無料で公開されている。
無料版・有料版の違いと利用条件
公式FAQに記載されている利用条件は次の通り。
- 動作環境:Windows 10以降。比較的新しいPCとWebカメラがあれば動く
- macOS:準備中
- 無料プラン:1セッションあたり60秒の上限つき。回数は無制限
- 有料プラン:Plus / Pro / Max の3区分。60秒の上限が撤廃され、月ごとの「アバター稼働時間」が付与される
各プランの具体的な料金は公式FAQでは明示されておらず、ダウンロードページや課金画面で確認する必要がある。最新情報はDelulu Cam公式サイトで確認したい。
紹介報酬プログラム(アフィリエイト)も用意されており、紹介したユーザーが課金するたびに継続的な報酬が得られる仕組みになっている。
課題と今後の見通し
リアルタイム動画変換は、画質と倫理の両面でまだ課題が残っている。
画質面では、オフラインで時間をかけて生成する動画モデルと比べると細部の再現性で差があるという指摘がある。Smart History Augmentationによってドリフトは抑えられているが、長時間配信での安定性は実機環境やネットワーク状況の影響を受けやすい。
倫理面では、リアルタイムで他人になりすませることへの懸念がある。Lucy 2.0自体には強力なコンテンツフィルターが搭載されていないとされており、Decartは利用規約で禁止事項を定めているものの、運用は基本的にユーザーモラルに委ねられている。なりすまし、ディープフェイク、詐欺などへの転用リスクは利用者側で意識する必要がある。
商用利用の観点では、Lucy 2 APIが秒課金(約0.05ドル/秒)のため、たとえばECサイトの試着シーンに置き換えると1ユーザーあたり数ドル単位のコストが発生する。普及には推論コストの低下が前提になるとされており、現状はクリエイター・配信者向けの先行領域で使われていく見通しだ。Delulu Cam単体はサブスクリプション制で、こうしたAPIコストを月額料金に丸める形を採っている。
よくある質問
Q: 日本語環境でも使えますか?
A: 公式サイトでは日本語対応の明記はないが、アプリ自体はWindows上で動作するためインストールと操作は可能。最新の対応状況はDelulu Cam公式サイトとMicrosoft Storeのページで確認するのが確実。
Q: Webカメラがなくても使えますか?
A: 使えない。Delulu Camは実機のカメラ映像を入力に変換する仕組みのため、Webカメラ(または同等のカメラ入力)が必要になる。
Q: 出力した映像を録画して配布しても大丈夫ですか?
A: 利用規約と各種法令の範囲内であれば技術的には可能だが、他人の容姿を無断で使う、肖像権を侵害する、なりすましや詐欺に転用するなどはNG。利用者側の判断で慎重に扱う必要がある。
まとめ
Delulu Camは、Decartのリアルタイム動画変換モデル「Lucy 2.0」を一般ユーザー向けに開放したアバターアプリだ。1080p/30fpsで動作し、ZoomやDiscord、OBSなど主要なカメラ対応アプリで仮想カメラとして利用できる。Webカメラに映る自分を任意のアバターに置き換える体験を、比較的低いハードルで提供している。
画質、倫理、コストの3点には依然として課題が残る。とくになりすましや肖像権の問題は利用者側で意識して使うべきで、配信や会議の演出に組み込むときは利用規約と相手の合意を踏まえたうえで運用したい。
【用語解説】
- Lucy 2.0: Decartが2026年1月に公開したリアルタイム動画変換モデル。1080p/30fps、サブセカンドのレイテンシでフレームごとに動画を生成する
- Smart History Augmentation: Lucy 2.0が長時間動作で画質が崩れる「ドリフト」を抑えるために採用した学習手法。自身の不完全な出力を学習データに混ぜて自己補正する
- AWS Trainium3: AmazonがAI学習・推論向けに開発したアクセラレーター。Lucy 2.0の運用基盤として採用されている
免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。
引用元:
- [1] Delulu Cam 公式サイト – https://delulu.cam
- [2] Decart 公式サイト – https://decart.ai/
- [3] Decart Platform / Lucy 2 Realtime Documentation – https://docs.platform.decart.ai/models/realtime/lucy-2
- [4] THE DECODER「Decart’s Lucy 2.0 transforms live video in real time」 – https://the-decoder.com/decarts-lucy-2-0-transforms-live-video-in-real-time-using-text-prompts/
15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。
技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。
また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。