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Feb 11 2026

ai.comが7000万ドルで売却、スーパーボウル広告でAIエージェントプラットフォームを発表

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📖 この記事で分かること

  • ai.comがドメイン史上最高額の7000万ドルで売却された
  • Crypto.com創業者が「AIエージェント」プラットフォームを立ち上げた
  • スーパーボウル広告直後にサイトがダウンする事態になった
  • ChatGPTやClaudeとは異なるアプローチでAI市場に参入する

💡 知っておきたい用語

  • エージェンティックAI(Agentic AI):ユーザーに代わってアプリ操作やタスク実行を「自律的に」行うAIのこと。チャットで質問に答えるだけのAIとは違い、実際に仕事をこなす「秘書」のようなものです。

最終更新日: 2026年02月11日

ドメイン史上最高額、ai.comが7000万ドルで売却

ai.comが7000万ドル(約100億円)で売却され、公開されたドメイン取引として史上最高額を記録しました。2019年のvoice.comの3000万ドルという従来の記録を2倍以上更新しています。

購入者は、暗号資産取引所Crypto.comの共同創業者兼CEOであるKris Marszalek(クリス・マーシャレック)氏です。取引は2025年4月に完了し、仲介はGetYourDomain.comのLarry Fischer氏が担当しました。支払いは全額暗号資産で行われたと報じられています。

このドメインの経緯も注目に値します。ai.comは1993年に登録された歴史あるドメインで、近年は以下のように転々としてきました。

  • 2023年前半:OpenAIがChatGPTへのリダイレクトに使用
  • 2023年後半:Elon Musk氏のxAI(Grok)へリダイレクト
  • 2024〜2025年初頭:Google GeminiやDeepSeekへのリダイレクトも確認
  • 2025年4月:Marszalek氏が取得し、独立プラットフォームとして開発開始

売却元について、マレーシアの起業家Arsyan Ismail氏が所有者だったと報じられています。なお、当初の売り出し価格は1億ドルだったとされています。

新プラットフォーム「ai.com」の正体

ai.comは2026年2月8日、スーパーボウルLXのNBC放送中にCMを放映し、消費者向けAIエージェントプラットフォームとして正式にローンチしました。

プラットフォームの核となるのは、ユーザーごとに生成される「パーソナルAIエージェント」です。従来のチャットボットとは異なり、ユーザーに代わって実際にタスクを実行する点を強調しています。公式発表によると、主な機能は以下のとおりです。

  • 仕事の整理、メッセージ送信、アプリ間でのアクション実行
  • 株式取引、ワークフロー自動化、カレンダー管理
  • プロジェクトの構築やデートプロフィールの更新まで対応を予定

最大の差別化ポイントとして、エージェントが不足している機能やケイパビリティ(能力)を自律的に構築し、その改善をネットワーク上の数百万のエージェント間で共有する仕組みを掲げています。Marszalek氏はこれを「分散型エージェントネットワーク」と呼び、「AGI(汎用人工知能)の到来を加速させる」と述べています。

利用は無料で開始でき、追加機能や入力トークンの増量には有料サブスクリプション【定期課金プラン】が用意されています。ユーザーは自分の「ハンドル名」とAIの名前を選ぶだけで、60秒でエージェントを生成できるとしています。

スーパーボウル広告の反響とサイトダウン

スーパーボウルLXの第4クォーターに放映された30秒のCMは、暗闇の中で光る2つの球体が衝突してai.comのロゴが現れるという内容で、視聴者にハンドル取得を促すものでした。

しかし、CMの放映直後にアクセスが殺到し、サイトがダウンするという事態が発生しました。原因はGoogle認証リクエストの処理が追いつかなかったこととされています。Marszalek氏はX(旧Twitter)上で「とんでもないトラフィック量だ。スケールには備えていたが、ここまでは想定外だった」とコメントしています。

このローンチの不具合について、テックメディアからは厳しい指摘も出ています。Tom’s Hardwareは、7000万ドルのドメインを取得した企業の初の大規模テストで、認証というベーシックな部分で冗長性がなかったことを「弁解の余地がない」と評しました。一方で、この反応自体がai.comというドメインの持つ注目度の高さを証明したとも言えます。

なお、今年のスーパーボウルではAI関連の広告が全体の約23%(66本中15本)を占めており、OpenAI、Anthropic、Google、Meta、Amazonなども広告を出稿しています。ai.comの元の所有に関わったとされるOpenAIが、同じ放送枠でChatGPTの広告を展開したという点も話題になりました。

Crypto.comの実績とAI市場への挑戦

Marszalek氏がai.comで成功できるかどうかは、同氏のCrypto.comでの実績が一つの判断材料になります。2018年に約1200万ドルでcrypto.comドメインを取得し、プラットフォームは現在1億5000万人以上の利用者を持つ世界有数の暗号資産取引所に成長しました。2021年にはステイプルズ・センター(ロサンゼルスのスポーツ施設)の命名権を7億ドルで取得するなど、大胆なマーケティング戦略で知られています。

「Crypto.comを始めたとき、取引所は約1000あった。それでもなんとかうまくいった。ai.comも何とかする」と同氏はFinancial Times紙に語っています。

ただし、懸念材料も少なくありません。

まず、競合環境の厳しさがあります。OpenAI、Anthropic、Googleといったフロンティア【最先端】のAI研究機関が独自のエージェント機能を急速に展開しており、ai.comが技術的にこれらと競争できるかは未知数です。Engadgetは「強力なマーケティングと、実際に確立されたAI研究機関のエージェント製品と競争できるツールは、まったく別物だ」と指摘しています。

また、タイミングへの疑問もあります。Crypto.comが2021年のMatt Damon出演CMやスーパーボウル広告で大きく注目された後、2022年6月にビットコイン価格が大幅に下落した経緯があります。現在もビットコインは2025年10月の約12万7000ドルから6万6000ドル以下に下落しており、暗号資産市場は厳しい局面にあります。

さらに、プラットフォームの具体的な技術的詳細はまだ限定的で、「分散型エージェントネットワーク」の仕組みや、エージェント同士がどのように改善を共有するかといった点は、今後の情報開示が待たれます。


よくある質問

Q: ai.comは以前どこにリダイレクトされていましたか?

A: ai.comは近年、複数のAIサービスへのリダイレクト先として変遷してきました。2023年前半はOpenAIのChatGPTに、同年後半はElon Musk氏のxAI(Grok)に転送されていました。その後Google GeminiやDeepSeekへの転送も確認されていましたが、2025年4月にKris Marszalek氏が取得し、独立したプラットフォームとして開発が始まりました。

Q: ai.comのサービスは無料で使えますか?

A: 基本機能は無料で利用でき、ハンドル名とAI名を設定するだけで60秒でエージェントを生成できるとされています。より高度な機能や入力トークンの増量には有料サブスクリプションが用意されています。具体的な料金プランの詳細は、本稿執筆時点では公開されていません。

Q: ai.comはChatGPTやClaudeとどう違うのですか?

A: ai.comは「エージェンティックAI」を前面に打ち出しており、質問に答えるだけでなく、ユーザーに代わってアプリ操作やタスク実行を自律的に行う点を差別化ポイントとしています。また、エージェント同士が改善を共有する「分散型ネットワーク」を掲げていますが、技術的な詳細は限定的であり、既存のAIプラットフォームとの実質的な性能差はまだ検証されていません。


まとめ

ai.comの7000万ドルでの売却と、スーパーボウル広告によるプラットフォームローンチは、AIドメインの価値とAIエージェント市場への関心の高さを象徴する出来事です。Crypto.comで大規模なブランド構築に成功した実績を持つMarszalek氏の挑戦ですが、OpenAIやAnthropicといった技術力を持つ競合との差別化は容易ではありません。ローンチ初日のサイトダウンという課題もあり、「マーケティングの強さ」と「プロダクトの完成度」のギャップをどう埋めるかが、今後の成否を左右しそうです。


【用語解説】

  • エージェンティックAI: ユーザーの指示や意図にもとづき、アプリ操作やウェブ上のタスクを自律的に実行するAI技術。従来のチャット型AIが「回答」を返すのに対し、実際に「行動」する点が特徴です。
  • AGI【えーじーあい】: Artificial General Intelligence(汎用人工知能)の略。特定のタスクだけでなく、人間と同等かそれ以上の幅広い知的作業をこなせるAIを指します。現時点では実現していませんが、AI業界の長期的な目標として広く議論されています。
  • ドメイン: インターネット上の「住所」にあたるもの。ai.comやgoogle.comなど、ウェブサイトにアクセスするために入力する文字列のこと。短く覚えやすいドメインは高い商業的価値を持ちます。

免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。


引用元:

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KOJI TANEMURA

15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。

技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。

また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。