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Jan 26 2026

Anthropicの「Claude in Excel」とは何か?Excelサイドバーで動くAIアシスタントを解説

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※本記事は、Claude in ExcelがProプランに対応し、
複数ファイル対応や安全なセル編集、長時間セッションの安定化が行われた
現時点の仕様をもとに解説しています。

📖 この記事で分かること

  • AnthropicがExcel用AIアドイン「Claude in Excel」をベータ公開
  • セルレベルの引用と変更追跡で透明性を確保
  • 金融モデリングやエラー修正に強み、ただしマクロは未対応
  • Microsoft Copilotとの競争が本格化

💡 知っておきたい用語

  • サイドバー:Excelの画面右側に表示される補助パネル。ここにClaudeのチャット画面が組み込まれ、作業しながらAIに質問できます。

最終更新日: 2026年01月26日

Claude in Excelとは何か

Anthropicが提供するAIアシスタント「Claude」を、Microsoft Excelのサイドバーから直接利用できるアドインです。2025年10月27日に「研究プレビュー」としてベータ版が発表され、同年11月24日にはピボットテーブルやグラフ作成機能が追加されました。

このアドインを使うと、開いているExcelブックの内容をClaudeが読み取り、数式の解説や仮定値の変更、エラーの修正、さらには新規モデルの作成までを自然言語で依頼できます。Claudeが行った変更はすべて追跡され、参照したセルへのリンク付きで説明されるため、AIが「何をしたか」を確認しやすい設計になっています。

現在は、Claude Proを含む有料プランで利用可能です。Microsoft Marketplaceからインストールでき、起動はMacならControl+Option+C、WindowsならControl+Alt+Cのショートカットで呼び出せます。

主な機能と特徴

Claude in Excelの強みは、複雑なスプレッドシートを理解したうえで作業を支援する点にあります。

まず、特定のセルや数式について質問すると、関連するセルへのリンク(引用)付きで回答が返ってきます。複数タブにまたがる計算フローも追跡できるため、他人が作った複雑なモデルの構造を把握するのに役立ちます。

仮定値の変更も、数式の依存関係を維持したまま実行可能です。たとえば「成長率を2%上げて最終価値への影響を見せて」と依頼すれば、関連するセルを自動で更新し、どこをどう変えたかを一覧で提示します。

エラー修正機能では、#REF!や#VALUE!、循環参照といった問題の原因をたどり、修正案を提示します。また、既存のテンプレートにデータを流し込んだり、DCF(割引キャッシュフロー)モデルを一から構築したりといった作業も可能です。

対応ファイル形式は.xlsxと.xlsmの2種類で、既存の書式や数式構造は保持されます。使用されるモデルはClaude Opus 4.5で、現時点ではモデルの切り替えはできません。

最近のアップデートでは、複数のExcelファイルをまとめて扱えるようになり、
複数モデルや資料を横断した分析もしやすくなっています。

現時点での制限事項

ベータ版ということもあり、いくつかの制限があります。

条件付き書式、データの入力規則、データテーブル、マクロ、VBA(Visual Basic for Applications)には対応していません。Anthropicはこれらの機能について「対応を進めている」としていますが、具体的な時期は明らかにされていません。

チャット履歴はセッション間で保存されないため、Excelを閉じると会話内容は失われます。Team・Enterpriseプランで設定したデータ保持ポリシーや監査ログの対象にも、現時点では含まれていません。

また、Anthropicは外部から入手したスプレッドシート(ダウンロードしたテンプレートやベンダーから受け取ったファイルなど)をClaude in Excelで開く際のリスクを公式に注意喚起しています。セルやコメントに悪意ある指示を埋め込み、AIを操作しようとする「プロンプトインジェクション攻撃」の可能性があるためです。信頼できるファイルのみで使用することが推奨されています。

金融サービス戦略の一環としての位置づけ

Claude in Excelは、Anthropicが進める「Claude for Financial Services」戦略の一部として発表されました。同時に、金融データプロバイダーとの連携(コネクター)や、DCFモデル構築・企業分析といったタスクを自動化する「エージェントスキル」も追加されています。

背景には、金融業界でのExcel依存度の高さがあります。英Acuity Trainingの調査によれば、オフィスワーカーの3分の2が1時間に1回以上Excelを使い、業務時間の3分の1以上をExcelに費やしているとされています。この領域にAIを組み込むことで、Anthropicは企業向け市場への浸透を狙っています。

一方、MicrosoftもExcel向けに「Copilot」機能を強化しており、両社の競争が激しくなっています。Copilotは2024年8月にセル内関数として導入され、直近ではOpenAIのGPT-5を活用した「エージェントモード」も追加されました。Claude in Excelは、Microsoftの製品内で競合AIが動くという興味深い構図を生んでいます。


よくある質問

Q: 無料プランでも使えますか?

A: いいえ。Claude in Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseプランの利用者が対象です。無料プランでは利用できません。

Q: 日本語で質問できますか?

A: Claudeは日本語に対応しているため、日本語での質問や指示が可能と考えられます。ただし、Excel関数名やエラーメッセージは英語表記の場合があり、公式に日本語サポートの詳細は明示されていません。

Q: Microsoft Copilotとどちらを使うべきですか?

A: 用途によります。Claude in Excelは金融モデリングや複雑な分析に特化した設計で、外部データコネクターや専用スキルが用意されています。一方、Copilotはoffice製品全体との統合が強みです。両者を比較検討のうえ、業務に合った方を選ぶとよいでしょう。


まとめ

Anthropicの「Claude in Excel」は、Excelのサイドバーから直接AIアシスタントを呼び出せるアドインです。セルレベルの引用や変更追跡により透明性を確保しつつ、金融モデリングやエラー修正を効率化します。マクロ未対応などの制限はありますが、複数ファイル対応や安全設計、長時間作業への配慮が進んだことで、実務での検討に十分耐えるAIアシスタントになりつつあります。


【用語解説】

  • DCFモデル【ディーシーエフモデル】: Discounted Cash Flow(割引キャッシュフロー)の略。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算出する手法。
  • プロンプトインジェクション【ぷろんぷといんじぇくしょん】: AIへの指示文(プロンプト)に悪意ある命令を紛れ込ませ、意図しない動作を引き起こす攻撃手法。
  • MCP(Model Context Protocol)【エムシーピー】: Anthropicが提唱する、外部ツールやデータソースとAIを接続するためのプロトコル。金融データ連携などに使用される。

免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。


引用元:

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KOJI TANEMURA

15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。

技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。

また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。