ZDRでも消えないデータがある。OpenAIとAnthropicは保存先を顧客側へ anchor left anchor right

Sep 07 2026 AIニュース

ZDRでも消えないデータがある。OpenAIとAnthropicは保存先を顧客側へ

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📖 この記事で分かること

  • ZDRの定義と、各社の既定保持挙動との違い
  • 主要4社のZDR提供条件と申請ルート
  • ZDRでも保持され続ける3つの例外
  • 契約前に確認すべき審査ポイント

💡 知っておきたい用語

  • ZDR:AIのAPIに送った文章を、処理が終わったら保存しない取り決め。銀行の窓口で書類を処理した直後に原本を返してもらうイメージ
  • Abuse monitoring:利用規約違反を見つけるための監視。ここで「保存しない」と両立させるのが難しい
  • Covered Models:提供側が30日間のデータ保持を必須にしている特定モデル群

最終更新日: 2026年9月7日

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ZDRとは何か

この記事のポイント

  • Anthropicは2026年9月1日にEnterprise Frontier Safeguardsを発表し、監視用データを顧客管理のクラウドに置く方式へ移行します(2026年9月時点)。
  • OpenAIもPrivate Safety Processingをプレビュー中で、技術white paperを9月に公開予定(2026年9月時点)。
  • ZDRでも安全分類器の結果や法令対応データは残ります。「何も残らない」ではありません。

ZDR【ゼットディーアール】(Zero Data Retention / ゼロデータ保持)は、AIのAPIに送った入力と、モデルが返した出力を、処理後に保存しないという提供側との取り決めです。

重要なのは、ZDRが「送ったデータがどこにも存在しなくなる」制度ではない点です。OpenAIは自社の説明で、ZDRを「対象となるAPI顧客の入力とモデル応答を、リクエスト処理後に保持しない」ものと定義し、あわせて「顧客コンテンツはOpenAIの担当者によるレビューの対象にならない」と述べています。Anthropicも同様に、ZDR契約下では「APIの応答を返した後、顧客の入力と応答を保存しない」と明記しています。

つまりZDRが約束するのは、通常運用における保存の停止です。法令遵守と不正利用対策のために必要な範囲は、どのベンダーでも明示的に除外されています。

既定の保持挙動と、主要4社のZDR提供条件

ZDRを理解するには、まず「申請しない場合に何が起きるか」を押さえる必要があります。既定の挙動はベンダーごとに大きく違います。

ベンダー 既定の保持挙動 ZDR相当の提供条件
Anthropic(Claude API) 会話内容は既定で保持しない。ただしCovered Modelsは30日保持が必須 営業経由で申請。組織単位で有効化
OpenAI 対象エンドポイントで申請制 営業経由で申請。承認が前提
Microsoft(Azure OpenAI) 不正利用監視のため入力と応答を30日保持 Modified Abuse Monitoringに申請。Limited Accessの追加要件あり
Google(Gemini Enterprise Agent Platform) 分類器が疑わしい挙動を検知した場合のみ入力を最大90日保持 申請フォームで除外を要求

いずれも共通しているのは、ZDRが自動適用ではなく申請制という点です。Anthropicのドキュメントは、ZDRが組織単位で有効化され、同じアカウント配下でも新しい組織には自動的に引き継がれないと注意しています。Microsoftも、Modified Abuse Monitoringはアカウントチーム管理下の顧客か対象プログラム参加者に限られるとしています。

Googleの構成はやや特殊です。通常のGenerative AI Servicesでは、分類器が疑わしい挙動を検知したときに限って入力が記録され、顧客が選んだリージョン内で最大90日保存されます(2026年9月時点)。一方で「Advanced AI」に指定されたモデル群では、入力と応答がすべて最大30日保存され、機能によっては除外自体ができません。この指定にはClaude MythosとClaude Fableの全バージョンが含まれます。

ZDRでも残る3つの例外

ここが実務でもっとも誤解される部分です。ZDR契約を結んでも、次の3種類のデータは残ります。

1. 安全分類器の結果

Anthropicは、ZDR契約下でも利用規約を執行するために「User Safety分類器の結果」を保持すると明記しています。入力そのものではなく、判定結果というメタデータが残る形です。

2. 法令で保持が義務づけられたもの

OpenAIは注記で、児童性的虐待コンテンツの疑いがあると判定された画像は、法令上の報告義務があるため、ZDR環境でも手動レビューと報告のために保持され続けると説明しています。

3. ZDR対象外の機能を使ったときのデータ

見落としやすいのがこれです。Anthropicのドキュメントは、ZDR対象外(表で「No」)の機能について、APIはリクエストをブロックしないと説明しています。対象外機能を使うことは「そのデータについてZDR契約の外に出るという選択」であり、その機能自身の保持ポリシーが適用されます。コード実行のようなステートフルな機能が典型例です。

Anthropicの場合、ZDRの対象外にはClaude Console(playgroundを含む)、Claude Managed Agents、消費者向けプラン、Claude for Excel、そしてCovered Modelsが挙げられています。CORSがサポートされない点も実装に影響します。ブラウザから直接APIを呼ぶ構成は取れず、バックエンド経由のプロキシが必要です。

AIの入力データがどこまで扱われるかは、OpenAIが中身を見ずに不正利用を検知する新方式でも扱っています。

2026年の転換:監視を顧客側インフラで回す

2026年に入って、ZDRをめぐる状況は一度悪化し、そこから作り直されました。

AnthropicはMythos系モデル(Fable 5を含む)を投入した際、30日間のデータ保持を必須とする方針を取りました。これによって該当モデルではZDRが事実上使えなくなり、企業側から反発が出ています。

これに対する回答が、2026年9月1日に発表されたEnterprise Frontier Safeguards(EFS)です。Anthropicの説明では、EFSは「ZDRのプライバシーと、不正利用検知のための最新の安全機構を組み合わせた」仕組みで、監視に使う活動データは「Anthropicではなく顧客が管理するクラウドインフラ」に置かれます。顧客は自分の暗号鍵、アクセスポリシー、監査ログを保持します。レビューは全自動で、Anthropicの人間によるレビューは不要とされ、検知結果は顧客に直接通知されます。

EFSの対象はClaude Code、Claude Enterprise、Claude Platform、Amazon Bedrock、Claude Platform on AWS、GoogleのAgent Platform、Microsoft Foundryです。AnthropicはEFSに課金しないとしています(クラウド事業者側のストレージ料金は別)。提供は2026年秋から段階的で、それまでの間、対象顧客にはFable 5とFable 5.1でZDRが提供されます(2026年9月時点)。

OpenAIも同じ週に近い構造の仕組みを出しています。Private Safety Processingは、複数のやり取りをまたいだリスクを、担当者に中身を見せずに検知するための仕組みです。ZDR構成では顧客が管理するインフラにコンテンツが残り、OpenAI側ストレージを使う場合も顧客が管理する鍵で暗号化され、OpenAIの担当者はその鍵の複製を持ちません。リスクが検知されると、OpenAIには活動の種類を示す限定的なシグナルだけが届きます。技術white paperの公開とロールアウト開始は9月の予定です(2026年9月時点)。

編集部の見方

編集部は、2026年のZDRで本当に効いた変化は「保存しないこと」ではなく、保存先の管理権が提供側から顧客側へ移ったことだと見ています。したがって契約審査の質問は「ZDRはありますか」ではなく「フラグが立ったとき、中身を誰が読めますか」に置き換えるべきです。

  • 根拠1:OpenAIのPrivate Safety Processingでは、OpenAI側ストレージを使う場合でも顧客が管理する鍵で暗号化され、OpenAIの担当者は鍵の複製を持たないと明記されています(2026年9月時点)。
  • 根拠2:AnthropicのEFSは活動データを顧客管理のクラウドに置き、レビューは全自動でAnthropicの人間によるレビューを必要としません。検知結果は顧客に直接届きます。
  • 根拠3:一方でAnthropicのドキュメントは、ZDR下でもUser Safety分類器の結果を保持すると明記しています。「保存ゼロ」という語感と実装は一致していません。

この見方が変わる条件:EFSは2026年秋からの段階提供、Private Safety Processingはプレビュー段階です。ロールアウトで対象モデルやプラットフォームが絞られたり、Covered Modelsの30日保持要件が残り続ける場合、実務上の審査は当面「モデル単位の例外表を読む」作業のままになります。

契約前の確認事項と今後の見通し

現時点で審査担当が確認すべき項目は、次の5つに整理できます。

  1. 対象モデルの例外:使う予定のモデルがCovered Modelsやadvanced AI指定に含まれていないか。含まれる場合、ZDRは適用されません
  2. 機能単位の対象範囲:コード実行やファイル操作のようなステートフル機能を使うと、その部分だけZDRの外に出ます
  3. 組織単位の適用範囲:Anthropicの場合、新しい組織を作るたびに個別の有効化が必要です
  4. 経路の違い:同じClaudeでも、Amazon BedrockやGoogleのAgent Platform経由ではクラウド事業者がデータ処理者になり、参照すべきドキュメントが変わります
  5. フラグ時の可視性:検知シグナルが自社に届くのか、ベンダー側で処理されるのか

見通しとしては、OpenAIとAnthropicが同じ週に、ほぼ同じ設計(顧客管理ストレージ+顧客管理鍵+自動判定+限定シグナル)へ着地した点が重要です。フロンティアモデルの安全監視とZDRの両立は、業界の標準的な解き方に収束しつつあります。一方でGoogleのAdvanced AI枠のように、機能によっては除外できない領域が残っており、当面は「ベンダー横断で一律のZDR」を前提にした設計は成立しません。


よくある質問

Q: ZDRを契約すれば、送ったデータは完全に消えますか?

A: 消えません。安全分類器の判定結果、法令上の報告義務があるデータ、ZDR対象外機能を使った際のデータは保持されます。

Q: ZDRは自分で設定画面から有効にできますか?

A: 主要ベンダーはいずれも申請制です。OpenAIとAnthropicは営業経由、Microsoftは Modified Abuse Monitoring の申請フォーム、Googleは除外申請フォームを使います。

Q: Claudeを使う場合、どの経路でもZDRの扱いは同じですか?

A: 異なります。Claude APIとClaude Platform on AWS、Microsoft FoundryではAnthropicがデータ処理者ですが、Amazon BedrockとGoogleのAgent Platformではクラウド事業者が処理者となり、そちらのドキュメントが基準になります。


まとめ

ZDRは「保存しない」制度ですが、安全分類器の結果、法令対応データ、対象外機能のデータは残ります。2026年9月、AnthropicはEnterprise Frontier Safeguards、OpenAIはPrivate Safety Processingを相次いで提示し、監視用データを顧客が管理するストレージと鍵の下に置く方式へ揃えました。審査の焦点は、ZDR契約の有無からデータの管理権と可視性へ移っています。


【用語解説】

  • Covered Models: Anthropicが30日間のデータ保持を必須としているモデル群。Claude Fable 5.1、Claude Mythos 5.1、Claude Fable 5、Claude Mythos 5が該当します
  • Modified Abuse Monitoring: Azure OpenAIで不正利用監視の既定挙動を変更する申請プログラム。承認されると入力と応答が保存されなくなります
  • CMEK: 顧客が管理する暗号鍵。Googleの不正利用監視ログはCMEKで暗号化されない点が明示されています

引用元:


この記事について: AI 支援で執筆、編集部が事実確認・編集しています。誤りや追加情報があれば Contact よりお知らせください。

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KOJI TANEMURA

15 年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア / テクノロジーライター。AI エージェントの実務活用を研究し、現場や経営者向けセミナーでその知見を発信。本メディア tech-noisy.com では、一次情報に基づく最新ニュース・解説記事を執筆。また、音楽生成 AI による DJ パフォーマンスを企業イベントで行うなど、テクノロジーと表現の融合も探求している。