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AIが勝手に買い物する時代が来る?Google発表のUCPとは

2026年1月13日

📖 この記事で分かること
・Google UCP(ユニバーサル・コマース・プロトコル)とは何か
・AIとチャットするだけで買い物が完結する仕組み
・GoogleとShopifyが協力する理由と業界への影響
・あなたの買い物体験がどう変わるのか

💡 知っておきたい用語
UCP(Universal Commerce Protocol):AIが買い物をするときに使う「共通ルール」のこと。お店ごとにバラバラだった買い物の仕組みを統一して、どんなAIでもスムーズに商品を購入できるようにする技術です。


最終更新日:2026年1月13日

2026年1月11日、GoogleとShopifyが共同で開発した「Universal Commerce Protocol(UCP)」が発表されました。これは、AIエージェントが人間の代わりに買い物を完結させる「エージェント型コマース」を実現するためのオープンソース標準です。

UCPが変える買い物の未来

「誕生日プレゼントを探して購入して」とAIに頼むだけで、商品検索から決済まで全てが完了する——そんな未来がすぐそこまで来ています。

UCPは、AIが買い物をするための「共通言語」です。Google検索のAI ModeやGeminiアプリで直接商品を購入できる新機能として、近日中に実装される予定です。

実に興味深いのは、この技術がオープンソースとして公開されている点です。つまり、Googleだけでなく、あらゆる企業やAIプラットフォームがUCPを採用できます。

UCPの主な特徴

UCPには以下のような特徴があります:

  • モジュール式設計:必要な機能だけを選んで実装できる柔軟な構造
  • 複数プロトコル対応:REST API【エーピーアイ】、MCP【モデル・コンテキスト・プロトコル】、AP2【エージェント・ペイメント・プロトコル】など、様々な通信方式に対応
  • セキュリティ重視:トークン化された決済と検証可能な認証情報で安全性を確保
  • 拡張可能な設計:新しいAI体験が登場しても簡単に対応できる柔軟性

なぜ今、統一規格が必要なのか

ただ、なぜGoogleとShopifyはUCPを開発したのでしょうか?

答えは、急速に成長する「エージェント型コマース」市場にあります。コンサルティング会社McKinseyの予測によると、AI駆動のツールとエージェント型コマースにより、2030年までに小売市場は世界で3兆〜5兆ドル規模の機会になると見込まれています。

でも、これまでは各企業がバラバラに独自のシステムを構築していました。AIエージェントが様々なお店で買い物をするには、それぞれのお店に合わせた個別の対応が必要だったんです。

UCPは、この複雑さを解消します。お店側は「うちはこの機能に対応しています」と宣言し、AI側は「これとこれができます」と伝える。すると、両者が自動的に「じゃあこの方法で進めましょう」と交渉して取引を完了させます。

GoogleとShopifyの思惑

GoogleにとってUCPは、AI検索を単なる情報提供から「購入完結」へと進化させる重要な戦略です[6]。検索広告に依存してきたビジネスモデルを、AIネイティブな収益源へと転換する狙いがあります。

一方、Shopifyは数百万の加盟店を抱えるEコマースプラットフォーム最大手です。「Shopifyは何十年にもわたって、何百万もの独自の小売ビジネスのためにチェックアウトを構築してきました」とShopifyのVanessa Lee氏は述べています。

正直なところ、両社にとってこれは単なる技術革新ではありません。AI時代の商取引における「標準」を握るための競争なんです。

参加企業と実装予定

UCPの開発には、GoogleとShopifyに加えて、以下の主要企業が参加しています[6][5]:

  • Etsy:ハンドメイド商品マーケットプレイス
  • Wayfair:家具・インテリアのオンライン小売大手
  • Target:米国大手小売チェーン
  • Walmart:世界最大の小売企業

近日中に、Google AI ModeとGeminiアプリで直接購入できる新しいチェックアウト機能が実装される予定です[1]。初期段階ではGoogle Walletによる決済に対応し、将来的にはPayPalなどの他の決済方法も追加される計画です。

OpenAIとの競争が加速

注目すべき点は、UCPがOpenAIの「Agentic Commerce Protocol」と競合する立場にあることです。

OpenAIは2025年9月に、ChatGPT経由で直接商品を購入できる「Instant Checkout」を発表しました。Stripeと共同開発したこのプロトコルもオープンソースで、UCPと同様にAIエージェント型の買い物を実現します。

でも、GoogleとShopifyの組み合わせは実に強力です。Googleは世界最大の検索エンジンを持ち、Shopifyは数百万の加盟店ネットワークを持っています。この二つが組めば、OpenAIとは異なる規模でエージェント型コマースを展開できる可能性があります。

さらに、PerplexityもPayPalと提携してチャット内での購入機能を提供するなど、AI検索×買い物の領域は急速に競争が激化しています。

あなたの買い物はどう変わる?

UCPの普及により、買い物体験は次のように変わると期待されています:

より自然な会話での購入
「来週の旅行に持っていく軽いスーツケースを探して」とAIに話しかけるだけで、予算や好みに合った商品を見つけて購入まで完了します。

複雑な購入フローの簡素化
割引コードの入力、ポイントカードの登録、配送日時の指定、定期購入の設定など、これまで手間だった作業をAIが代行します。

カート放棄の減少
複雑なチェックアウトプロセスで途中離脱する「カート放棄」問題が、シームレスな会話型購入により大幅に減少すると予想されます。

個人的には、これは単なる利便性向上ではなく、買い物という行為の根本的な再定義だと感じています。「探す」「比較する」「決める」というプロセスを、どこまでAIに任せるのか。その境界線を、私たち消費者が改めて考える時期に来ているのかもしれません。

開発者にとっての意味

エンジニアの視点から見ると、UCPのアーキテクチャは実に興味深い設計です。

ケイパビリティベースの設計
モノリシックなプロトコルではなく、「チェックアウト」「商品検索」「注文管理」といった機能(ケイパビリティ)を個別のモジュールとして定義しています。お店は自分が対応したい機能だけを選んで実装できます。

ペイメントハンドラーの柔軟性
決済方法も同様に、各決済プロバイダーが独自の仕様を公開し、お店がそれを選択する形式です。プロトコル本体を変更せずに、新しい決済方法を追加できる設計になっています。

人間とAIの協調
全ての購入がAPI経由で完結するわけではありません。配送日時の選択など、人間の判断が必要な場面では、UCPが標準的な方法で必要な情報をユーザーに確認します。

実際に使ってみると、この柔軟性の高さが分かります。GitHub上の公式サンプル実装では、Pythonでの実装例が公開されており、誰でも試すことができます。

よくある質問

Q: UCPを使うとGoogleにデータを取られるの?
A: いいえ。UCPでは、小売店側が「Merchant of Record(取引の記録者)」として顧客データの所有権を保持します。Googleはプラットフォームを提供するだけで、取引データや顧客関係は完全に小売店に帰属します。

Q: UCPは小規模なお店でも使えるの?
A: はい。ShopifyがUCPに対応しているため、Shopifyを利用している数百万の中小規模店舗でも、わずか数行のコードで実装できる「Checkout Kit」が提供される予定です。

Q: いつから使えるようになるの?
A: Google AI ModeとGeminiアプリでの購入機能は「近日中」に実装予定です。具体的な日程は公表されていませんが、2026年前半には利用可能になると予想されています。関心のある事業者は、Googleのウェイティングリストに登録できます。

まとめ

GoogleとShopifyが共同開発したUCPは、AIエージェントが人間の代わりに買い物をする「エージェント型コマース」を実現するオープンソース標準です。2030年には3兆〜5兆ドル規模の市場になると予想されるこの分野で、GoogleとOpenAIの競争が本格化しています。

私たちの買い物体験は、「検索して比較して購入ボタンを押す」から「AIに頼んで完了を待つ」へと大きく変わろうとしています。ただ、この変化が本当に便利なのか、それとも何か大切なものを失うのか——それは、これから私たち自身が判断していくことになるでしょう。

【用語解説】

  • UCP(Universal Commerce Protocol)【ユニバーサル・コマース・プロトコル】:AIエージェントが様々な小売店で買い物をするための統一された通信規格。GoogleとShopifyが共同開発したオープンソース標準
  • エージェント型コマース:AIアシスタント(エージェント)が人間の代わりに商品検索から購入まで自動的に行う新しい買い物の形態
  • API【エーピーアイ】(Application Programming Interface):異なるソフトウェアやシステムが情報をやり取りするための「窓口」のような仕組み
  • オープンソース:ソースコードが公開されており、誰でも自由に使用・改変・配布できる技術やソフトウェアのこと
  • Merchant of Record:取引の正式な記録者・責任者として、顧客データや取引情報の所有権を持つ事業者

免責事項: 本記事の情報は2026年1月13日時点のものです。UCPの機能や実装スケジュールは予告なく変更される場合があります。最新情報はGoogle Developers公式サイトをご確認ください。

Citations:
[1] https://developers.google.com/merchant/ucp
[2] https://developers.googleblog.com/under-the-hood-universal-commerce-protocol-ucp/
[3] https://www.shopify.com/news/ai-commerce-at-scale
[4] https://shopify.engineering/UCP
[5] https://www.cnbc.com/2026/01/11/google-launches-universal-commerce-protocol-bets-on-ai-powered-retail.html
[6] https://ucp.dev/

KOJI TANEMURA

15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。

技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。

また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。

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