Nvidia Nemotron

NVIDIA本気のオープン戦略!100万トークン処理のNemotron-3登場

2025年12月17日

📖 この記事で分かること
・NVIDIAが発表した新しいAIモデル「Nemotron-3」の凄さ
・従来の約8倍(100万文字分)の情報を一度に処理できる能力
・モデル本体だけでなく、3兆トークンの学習データまで無料公開される衝撃
・エージェント型AI(自動で作業するAI)開発が劇的に簡単になる未来

💡 知っておきたい用語
エージェントAI:人間の指示を受けて、自動的に複数の作業を実行してくれるAIのこと。例えば「旅行プランを作って」と頼むと、検索・比較・予約まで勝手にやってくれるイメージ


最終更新日: 2025年12月17日

グラフィックカードで有名なNVIDIAが、AI業界に衝撃を与える発表をしました。それがNVIDIA Nemotron-3(ネモトロン・スリー)という新しいAIモデルファミリーです。

「またNVIDIAか」と思われるかもしれませんが、今回は本気度が違います。なぜなら、モデル本体だけでなく、3兆トークンの新しい学習データ、トレーニング方法のすべてを無料公開するという、前例のないオープン戦略を打ち出したからです。

Nemotron-3は何がすごいのか?

実に興味深いのは、このモデルがエージェント型AIに特化して設計されている点です。エージェントAIとは、単に質問に答えるだけでなく、複雑な作業を自動的にこなしてくれるAIのこと。

Nemotron-3ファミリーは、以下の3つのモデルで構成されています:

  • Nano(ナノ):最小モデル。30Bパラメータだが、推論コストが極めて低い【現在公開中】
  • Super(スーパー):中型モデル。協調型エージェントやITチケット自動化に最適【2026年前半公開予定】
  • Ultra(ウルトラ):最大モデル。最先端の精度と推論性能を提供【2026年前半公開予定】

注目すべき点は、現在公開されているNanoモデルでも、Artificial Analysis Intelligence Indexで最高スコア52を達成している事実です。つまり、効率性と精度のバランスで、同規模の既存オープンモデルを上回っているということです。

革新的な「ハイブリッドMoE」アーキテクチャ

技術的に最も驚かされるのが、Mamba-Transformer ハイブリッド Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャです。

これは何かというと、従来のTransformer(トランスフォーマー:現在主流のAI設計)の「計算コストが高い」という弱点を、Mamba-2(マンバ・ツー:新しい層の種類)という技術で補う設計です。

もう少し詳しく説明すると、MoE(Mixture-of-Experts、ミクスチャー・オブ・エキスパーツ)は「専門家の混合」という意味で、複数の専門特化したAI部品を使い分ける仕組みです。必要な部分だけを動かすことで、効率が大幅に向上します。技術的には、異なるタスクに対して最適な「専門家モジュール」を動的に選択し、計算リソースを効率的に配分する設計思想です。

この組み合わせにより、Nemotron-3は:

  • 推論スピードが従来比で大幅向上(同サイズモデル比で4倍のスループット)
  • 最大100万トークンのコンテキスト長(GPT-4 Turboの約8倍に相当)
  • 長いコードやドキュメントも一度に処理可能

という、実用性の高い性能を実現しています。

完全オープンの衝撃

ここからがNVIDIAの本気度が分かる部分です。通常、企業は自社のAIモデルを「ブラックボックス」にして競争力を保ちますが、Nemotron-3は違います。

公開されるのは:

  • モデルウェイト(AI本体):NVIDIA Open Model Licenseで商用利用可能
  • 3兆トークンの新しい学習データセット:Nemotron-CC-v2.1(2.5兆トークン)、Nemotron-CC-Code-v1(428億トークン)など、内容を検査・再利用できる
  • トレーニングレシピとソフトウェア:完全再現が可能
  • 強化学習環境(NeMo Gym):独自カスタマイズに対応

これは何を意味するか? 開発者が「NVIDIAと同じ方法」でAIを訓練できるということです。スタートアップや研究者にとって、これほど価値のあるリソースはありません。

マルチ環境強化学習で実用性を強化

Nemotron-3のもう一つの特徴が、マルチ環境強化学習によるポストトレーニングです。

これにより、モデルは以下の能力を獲得しています:

  • 複雑な推論タスクの実行
  • 複数ステップにわたるツール使用
  • 推論時の「予算制御」(どこまで深く考えるか調整可能)

特に面白いのが、推論時に使用する最大トークン数をユーザーが指定できる点です。「速さ優先」か「精度優先」かを、状況に応じて調整できます。

開発者は今すぐ試せる

Nemotron 3 Nanoは、すでにHugging Faceからダウンロード可能です。

使用例は驚くほどシンプルです:

from transformers import AutoTokenizer, AutoModelForCausalLM

model_name = "nvidia/NVIDIA-Nemotron-3-Nano-30B-A3B-Base-BF16"
tokenizer = AutoTokenizer.from_pretrained(model_name)
model = AutoModelForCausalLM.from_pretrained(
    model_name,
    torch_dtype=torch.bfloat16,
    trust_remote_code=True,
    device_map="auto"
)

正直なところ、NVIDIAがここまでオープンにするとは予想していませんでした。これは、エージェント型AI開発のエコシステム全体を加速させる戦略と言えます。

よくある質問

Q: Nemotron-3は無料で商用利用できますか?
A: はい、NVIDIA Open Model Licenseの下で商用利用が可能です。モデルウェイトだけでなく、学習データやトレーニングレシピも自由に活用できます。

Q: どんな用途に向いていますか?
A: マルチエージェントシステム、ITチケット自動化、長文コード処理、複雑な推論タスクなど、「自動で複数作業をこなすAI」の開発に最適です。

Q: GPUは必要ですか?
A: Nanoモデルは30Bパラメータなので、H100やB200などのエンタープライズGPUが推奨されます。ただし、効率性を重視した設計のため、従来モデルより少ないリソースで動作します。

まとめ

NVIDIA Nemotron-3は、単なる「新しいAIモデル」ではありません。これは、NVIDIAがオープンソースAIエコシステム全体を加速させるという明確な意図を持った戦略的発表です。

特に注目すべきは:

  • ハイブリッドMoEによる効率性の飛躍(4倍のスループット向上)
  • 100万トークンという実用的なコンテキスト長
  • 3兆トークンの新データセット公開による再現性の保証

2026年前半にSuperとUltraモデルがリリースされれば、エージェント型AI開発の landscape【ランドスケープ、風景・状況】は大きく変わるでしょう。開発者なら、今から公式ドキュメントをチェックしておくことをお勧めします。

【用語解説】

  • トークン:AIが文章を処理する際の最小単位。日本語なら1文字≒1-2トークン程度
  • パラメータ:AIの「知識量」を表す数値。30B(300億)は中型モデルの規模
  • MoE(Mixture-of-Experts):複数の専門特化したAI部品を使い分ける効率的な設計手法
  • コンテキスト長:AIが一度に「記憶」できる文章の長さ。長いほど複雑な作業が可能
  • 強化学習:報酬を与えながらAIに「試行錯誤」させて学習させる手法

免責事項: 本記事の情報は2025年12月17日時点のものです。必ず最新情報をご確認ください。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。

Citations:
[1] https://research.nvidia.com/labs/nemotron/Nemotron-3/
[2] https://research.nvidia.com/labs/nemotron/files/NVIDIA-Nemotron-3-White-Paper.pdf
[3] https://huggingface.co/nvidia/NVIDIA-Nemotron-3-Nano-30B-A3B-Base-BF16
[4] https://developer.nvidia.com/blog/inside-nvidia-nemotron-3-techniques-tools-and-data-that-make-it-efficient-and-accurate/
[5] https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-debuts-nemotron-3-family-of-open-models

KOJI TANEMURA

15年以上の開発経験を持つソフトウェアエンジニア。クラウドやWeb技術に精通し、業務システムからスタートアップ支援まで幅広く手掛ける。近年は、SaaSや業務システム間の統合・連携開発を中心に、企業のDX推進とAI活用を支援。

技術だけでなく、経営者やビジネスパーソンに向けた講演・執筆を通じて、生成AIの最新トレンドと実務への落とし込みをわかりやすく伝えている。

また、音楽生成AIのみで構成したDJパフォーマンスを企業イベントで展開するなど、テクノロジーと表現の融合をライフワークとして探求している。

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